4Gベースの新たな無線システム「MulteFire」が商用化に向けて動き出している。
MulteFireは、無線LANなどで使われている5GHz帯の免許不要帯域(アンライセンスバンド)向けのLTE/LTE-Advancedだ。昨年6月にクアルコムが構想を発表。クアルコムとノキアを創立メンバーとして12月には推進団体「MulteFireアライアンス」も発足し、エリクソン、インテルをボードメンバーに加えて、技術仕様の策定を始めている。
5GHz帯は、他の無線システムと帯域を共用するための技術条件を満たしていると認証された機器であれば、無線局免許を受けずに自由に利用できる。MulteFireアライアンスでは、この5GHz帯の技術基準に適合した4G仕様を策定することで、携帯電話事業者だけではなく、多様な企業が5GHz帯を使って4Gの設備を構築・運用できる世界の実現を目指している。
図表 MulteFireのコンセプト |
5GHz帯を4Gで利用しようという技術は、MulteFireが初めてではない。この春、3GPPリリース13で規格が固まったLAA(License Assisted Access)と、北米や韓国などで商用化が見込まれているLTE-U(LTE Unlicensed)の2つがすでに存在している。
多くの国では、5GHz帯に500MHz幅前後の広い免許不要帯域が設定されているが、LAA/LTE-Uはこの帯域を4Gで利用して急増するモバイルデータトラフィックに対処することを狙っている。日本で携帯電話に使われている周波数(BWAを含む)を全部合わせても約740MHz幅なので、実用化されればインパクトは大きい。
では、MulteFireはLAA/LTE-Uと何が異なるのか。クアルコムジャパンで標準化担当部長を務める城田雅一氏はその決定的な違いについて、「MulteFireでは通信制御を含むすべてのオペレーションを5GHz帯で完結させられる」と説明する。
クアルコムジャパン 標準化担当部長 城田雅一氏 |
LAA/LTE-Uは、他の4Gの周波数帯(ライセンスバンド)とキャリアアグリゲーション(CA)を組み、通信制御をライセンスバンド側で行う形をとる。このため、携帯電話事業者以外には活用できない。一方、MulteFireは誰でも5GHz帯を用いて4Gの設備を構築・運用できるのである。