11ac Wave2の目玉はマルチユーザーMIMOまず、1番目の高い安定性とパフォーマンスの実現に大きく寄与する技術として取り上げられたのが、今年から製品が投入されている最新の無線LAN規格IEEE802.11ac Wave2だ。11acは第5世代の無線LAN技術で、規格上の最大通信速度は前世代の802.11nの10倍超、6.93Gbpsに及ぶ。無線LANもいよいよギガビットの時代を迎えるのだ。
下野氏が最大通信速度の向上以上に、11acで注目すべきポイントとしてあげたのが、Wave2でサポートされたMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)だ。
現在のMIMOは送信、受信側の双方にn個のアンテナを実装することでn倍の通信速度を実現する。これに対してマルチユーザーMIMOは、送信側のn本のアンテナを利用して、1本しかアンテナを持たない最大n個の受信側の端末に同時にデータを送る。最大通信速度は向上しないが、混雑時でも通信速度が下がりにくく、安定した通信品質が実現できるのだ。アルバでは2015年秋発売のアクセスポイント「AP320シリーズ」で11ac Wave2に対応する。
802.11acの登場で無線LANの通信速度はGbpsの大台に乗る |
もう1つ、モビリティファーストで高い安定性・パフォーマンスを実現する上で重要になるのが、ビデオやVDI、ユニファイドコミュニケーション(UC)などの多様なアプリケーションをそれぞれ快適に利用できるようにすることだ。
アルバではこれを可能にするツールとして、モビリティコントローラでアプリケーションを識別・可視化するソフトウェア製品「AppRF」を提供している。AppRFを導入することで、業務上不要なアプリケーションを利用している通信を止めたり帯域を絞ったりすることができる。
位置情報の活用し無線LANを高付加価値化2番目のセキュリティ対策の実現手段として取り上げられたのが、統合認証基盤の「Clear Pass」だ。BYODやIoTが進展し、様々なデバイスがネットワークに接続されるようになるとセキュリティリスクは格段に高くなる。
Clear Passはこうした状況に対処できるようにするもので、ネットワークに接続しようとする全てのIPデバイスに対し、多様なコンテキスト情報(例えば、誰が、どういう端末で、OSは何を使ってなど)を用いて認証を行い、アクセス制御などを集中管理する。
統合認証基盤「Clear Pass」はIPデバイスの多彩なコンテキスト情報を用いて認証を行う |
Clear Passでは、他のベンダーのファイヤーウォール製品やMDM製品などに認証情報を受け渡し、これらの製品の機能と組み合わせた「多層防御」が実現できることも大きな特徴となっている。
下野氏は、セキュリティ対策の有効な手法としてもう1つ、アルバのモビリティコントローラによるアクセス制御機能を説明。SSIDとVLANと組み合わせてアクセス制限を実現する手法に比べて、シンプルで効率的なセキュリティ対策が実現できるとした。
3番目のネットワーク監視では、アルバの統合管理製品「AirWave」が紹介された。複数の拠点で構成された有線および無線のマルチベンダーネットワークを一元管理できる製品で、モバイルデバイスとアプリケーションの状態を可視化する機能を持っている。
最後のネットワークの高付加価値化の手段として取り上げられたのが、位置情報ソリューションの「Mobile Engagement」だ。これは無線LANやBluetooth Beaconで取得した利用者のスマホの位置情報と個人プロファイルを活用して、ニーズに応じた広告や通知、施設内ナビゲーションなどを提供できるようにするものだ。これにより、無線LAN設備の収益化が実現できる可能性があるという。
下野氏は「Meridian」という開発プラットフォームも紹介。「使えばネットワーク技術者も位置情報を使ったアプリを簡単に作れる。社内情報の配信などワークスタイル変革のツールとしても活用できるのではないか」とアピールした。