ユーザー起点で新たな価値を創造せよ!―― 三菱総研・大川真史氏が語る「IoTがもたらす変化」とは

「IoT(Internet of Things)」はどのような変化をもたらすのか。三菱総合研究所の大川真史氏は、「よく言われる業務の効率化ではなく、ユーザー起点による新たな価値創造こそIoTの本質」と説く。

IoTは業界の覇権をも変える
それを実現した例として挙げたものの1つが、航空機産業におけるGEの取り組みだ。同業界では長らく、フラッグシップキャリアや機体メーカーが多大な影響力を持ってきたが、「IoTによって、その覇権が入れ替わった」という。

GEは機体メーカーに対してエンジンを提供している。その意味では「部品メーカー」に過ぎない同社だが、実際に運行している機体から多種多様なデータを取得し、それを解析・活用することで、エンジンという部品以上の価値を機体メーカーやキャリアに提供することができるようになった。例えば、「どのような運転を行うべきか、どの高度を飛ぶのが最も効率的かなどの情報をLCCに対してGEがアドバイスできるようになる。キャリアは、GEのエンジンを積みたくなる」というわけだ。「使い様」を知ることができるようになったことで、一部品メーカーに過ぎなかったGEが業界内の主導権を握ったのである。

こうした変革を実現するために必要な方策として大川氏は、プラットフォームとビジネスモデルの構築こそが重要と説いた。プラットフォームとは、データを収集し、価値を提供するための基盤となる仕組みだ。そこで事業を行うためのビジネスモデルを一体として構築すべきという(写真4)。


【写真4】変革実現のために必要な方策

そのためのポイントとして挙げたのが、次の3点だ。

1つは、ユーザーが商品・サービスを利用する際のライフタイム価値を最大化すること。IoTによって顧客が受け取る価値(利益)を最大化し、その分け前を売上として得るビジネスモデルを構築するのだ。2つ目は、新たな価値を想像するために必要な情報を見極めることだ。大川氏は特に「自社の製品ではない部分の情報をいかに知るか」が焦点になると語った。

そして3つ目が、イノベーションチームの人材の多様性である。「『いつものメンバー』でない新しい人を入れること。当然、社内だけでなく、顧客や競合も含めて検討していくこと」がIoT時代にイノベーションを起こすには重要と指摘した。

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