約300拠点・約3500台への配布を2週間で完了
それからの動きは早い。
MDMについては、すでに有力候補があった。日本マイクロソフトの「Microsoft Enterprise Mobility Suite(EMS)」である。前述の課題をクリアできるうえ、iOSからAndroid、Windowsなど多様なデバイスを一元管理できるのが魅力だった。さらに三井不動産リアルティは、マイクロソフト製品を数多く採用しており、それらとの親和性の高さも採用の理由となった。
ただ、1つ不安だったのは、「MDMを変更しても大丈夫かどうか」である。
三井不動産リアルティでは、キッティングからMDMの運用管理、ユーザーサポートに至るまで、iPhoneの運用全般をKDDIにアウトソースし、サービスとして提供を受けている。
そこで正式な検討開始に先立つ1月30日、KDDIのSE2名と一緒に日本マイクロソフト本社を訪問。「KDDIのSEの方もおそらく、『MDMを入れ替えて平気かな』という気持ちがあったと思うのですが、実際にハンズオンで触ってみて、『これなら、やれます』と。以前のMDMのときも、KDDIの運用スキームにはないMDMをこちらのリクエストで組み込んでもらいましたが、とても柔軟性というかチャレンジ精神があると思いますね」(齊藤氏)
約300拠点・約3500台への配布を2週間で完了
情報システム部でMDMの検証作業などが進む一方、総務部のほうでは約3500台のiPhone 6の円滑な配布に向けた準備が慌ただしくなっていく。
一口に3500台といっても、三井不動産リアルティの場合、「三井のリハウスの店舗など、拠点数は全部で300弱ありますから大変です」と総務部 総務グループ グループリーダーの長田裕二氏は説明する。しかも、ただ発送すればいいのではない。個々の社員用にキッティングされたiPhone 6を間違いなく届け、さらに古いiPhone 4Sを回収する必要もあるのだから大仕事だ。
総務部 総務グループ グループリーダー 長田裕二氏 |
総務部 総務グループ 喜多村千春氏 |
iPhone 6のスムーズな配布に向けて、担当者が抽出したクリアしなければならない課題は約30項目。
例えば、納品日から機種変更作業完了までを4~6日と設定し全社員にアナウンスを行ったため、出張等により当該期間ではiPhone 6を受け取れない社員に個別対応する必要があった。結果として3500台中70台程度の個別対応が必要となったが、事前にKDDIとどういったケースでどのような対応をするかの切り分け作業を行えていた。
また、機種変更後のiPhone 4S端末を回収する必要があったため、iPhone 6納品とiPhone 4S回収を兼ねたリストを作成し、関係者間(KDDI・総務部・各拠点)で情報共有できるようにした。これらの課題すべてについて、KDDIと担当者が協議し、一緒に解決策を考えていったという。
そして、社内へのiPhone 6の配布作業は3月19日にスタート。周到な事前準備の結果、その約2週間後の3月30日にはすべてのiPhone 6の納品が完了した。
以下の表が今回のプロジェクトの主なスケジュールだが、「3500台のキッティング作業がたった2週間で終わったのも、すごいこと。iPhone 6への切替は、非常にスムーズに行えました」と長田氏は評価する。
1月30日 | 日本マイクロソフトの品川本社でMicrosoft EMSのデモ見学 |
2月5日 | EMSの導入検討開始 |
2月7日 | 検証環境でのEMSの検証開始 |
2月10日 | 三井不動産リアルティ、KDDI、日本マイクロソフトの3社で検証結果を踏まえた導入までの課題整理 |
2月13日 | 3社による課題に対する対応策の協議 |
~24日 | 各社にて対応策の立案 |
3月2日 | iPhone 6のキッティング内容の確定 |
~6日 | 各種マニュアルの作成 |
3月9日~ | iPhone 6のキッティング開始 |
3月19日 | iPhone 6の社内への配布開始 |
3月30日 | iPhone 6の配布完了 |