KDDIもクラウドPBXとクラウドUCを提供しているが、サービスの提供形態はNTTコムとは異なっている。
2012年6月に提供を始めた「KDDI 仮想PBXサービス」(図表)は、ユーザー企業ごとに専用のクラウド環境を用意するプライベートクラウド型のサービスだ。
図表 KDDI 仮想PBXサービスの概要 |
UCに関しても同様で、Microsoft Lyncをプライベート型のサービスで提供している。同社のクラウド基盤サービスである「KDDIクラウドプラットフォームサービス(KCPS)」上で顧客企業向けに専用のLync Serverを運用し、ユーザーはネットワーク経由でその機能を利用する(以下「Lyncサービス」)。
パブリッククラウドは複数のユーザー企業がサーバーを共有することでコストを下げるものだが、プライベート型にはそうしたメリットはない。
料金の安さを追求するならばパブリック型のほうが有利であることは間違いないが、パブリック型のサービスを提供するには、先行投資が必要になる。一方、IaaSやPaaSを提供するためのクラウド基盤であるKCPSをすでに持っており、その基盤を活用して提供できるプライベート型のクラウドPBX/UCならば、事業リスクは少ない。KDDIの内田氏は、「ビジネス的な判断から、現在はプライベート型」と話している。
「総務から情シスへ」が後押しに
とはいえ、第1回で紹介したクラウドPBX/UCのメリットは、KDDI 仮想PBXサービスとLyncサービスにも共通する。パブリック型と比べれば料金は割高ではあるが、運用管理をKDDIに任せられること、PBXやLync Serverを購入・設置せず月額料金で利用できることなどは、オンプレミス型に対する優位点となる。
あえて言えば、目に見える料金の安さよりも、PBX/UCの運用をアウトソーシング化し、管理負荷を軽減することにフォーカスしたサービスと言ってもいいだろう。これが、PBX設備の更改期を迎えた企業ユーザーに受けているようだ。
ソリューション推進本部 パートナーソリューション部 3グループリーダーの藤田英世氏は「これまで総務部門が管理していた音声系を情報システム部門に移管されるお客様が多い。情シスは音声に詳しくなく管理も煩雑になるため、移管を機にPBXの運用をすべてアウトソースしたいというニーズが最近増えている」と話す。
これと音声回線・データネットワーク、携帯電話/スマートフォン、さらにIT系のクラウドと合わせて提供すれば、企業のICT基盤をまるごとサービスとして提供できる。「これによって、PBXメーカーにはできない強みが出せる」と藤田氏は話す。