ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は、「モバイル通信情報サービスの将来像とソフトバンクの戦略」と題して講演した。
ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長 |
冒頭、松本氏は、ソフトバンクモバイルをインターネット業界から通信業界に進出した希有な存在であり、世界移動通信事業者がその動きに注目していると述べた。
その上で2兆円の巨費を投じ、旧ボーダフォンの事業を買収した理由を「将来モバイル分野が情報通信の中枢に位置するようになる。そのためには、日本のケータイ事業を持っていなければ世界の動きをリードできないという確信を持っていたから」と説明した。
そこあるのは、端末、コンテンツ・サービス、ネットワークを一体とした「総合的なバリュー」をユーザーに提供する日本の携帯電話事業者のエコシステムが、非常に優れたものだという認識である。
松本氏は、総務省の研究会などで理想像とされた海外の「水平分業」モデルも実質は「総合的なバリュー」の提供をノキアなどの端末メーカーに委ねるもので、これが今やアップルやグーグルなどのインターネットプレイヤーに脅かされているとする。そしてこれに対抗する手だてとして、今「日本のエコシステム」が注目されているという。
SIMロック議論などに関連して、日本の端末メーカーが海外展開で出遅れた要因をキャリアのビジネスモデルに求めるマスコミや識者の見方についても、同氏はその本質的な問題は「本来国内での余力で海外に出るべきだったのに、中途半端に大きな日本市場に安住してしまった」ことにあるとし、逆に「日本のエコシステムを信じて、世界に広げていかなければならない」と強調した。
その具体的な活動の1つとして、松本氏は、ソフトバンクが、中国移動通信、英ボーダフォン、米ベライゾン・ワイヤレスともに統一のサービスプラットフォームの構築を進めているJoint Innovation Lab(JIL)を挙げ、さらにこれがテレフォニカ(英・スペイン)、米AT&Tモバイリング、独T-モバイル、NTTドコモなどが推進する「ホールセール・アプリケーションズ・コミュニティー(WAC)」と合流、30社以上のキャリアからなる大きな動きに発展しつつあると述べた。
広告への依存度が高いインターネットプレイヤーのビジネスに対して、ユーザーに対する課金手段を持ち、多彩な顧客データ――特にユーザーがいつ、どこで、どういう状況にあるかをつかむことができる、キャリアのビジネスのビジネスは大きな可能性を秘めており、「最大のリテール(小売り)業者となる可能性がある」と松本氏は見る。
さらに同氏は、ソフトバンクでは数カ月前からデータARPUが基本料と音声通話の収入が逆転、55%に達しているとした上で、さらに、動画、TwitterなどのSNS系サービス、iPadによる書籍配信などが牽引する形で、データ通信トラフィックは大きく伸びると予測。現在拡充を進めている「モバイル」と「Wi-Fi」のインフラに、「放送」を加え、三位一体でこれに対応していく考えを明らかにした。
LTEについては、世界的に普及が本格化するには10年程の時間がかかるとした上で、ソフトバンクとしては、端末チップなどがある程度リーズナブルになる「2012~13年頃」の導入を考えていることを改めて示した。