マイクロソフトのUCが新段階へ――LyncとSkypeの融合の先に見据える新コンセプトとは?

マイクロソフトがUCの新コンセプトを発表した。目指すのは、仕事とプライベートのコミュニケーション基盤がシームレスにつながる世界だ。シェアトップを視野に、同社のUC事業は新たなフェーズに突入する。

マイクロソフトのUC(ユニファイドコミュニケーション)基盤製品「Microsoft Lync」が好調だ。前身である「Office Communications Server(OCS)」時代も含め、ワールドワイドでは38四半期連続で2桁成長を続けているという。昨期は売上10億ドルを達成し、マイクロソフトは「コミュニケーション」市場でもトップを見据える位置に来た。

そして、同社は2月にラスベガスで行われたイベント「Lync Conference 2014」で戦略発表を行った。内容は、コミュニケーション事業における新コンセプトと、クラウド型UCサービス「Lync Online」の機能強化だ。後者に関しては、現時点では米国に限って提供される予定で、日本市場での展開は未定の部分も含まれるが、同社のUC 事業戦略において非常に重要な意味を持つ。

LyncとSkypeが融合

新コンセプトは「ユニバーサルコミュニケーション」――。これは、コミュニケーション手段の統合を意味するUCよりもさらに広い“つながり”を実現しようとする、マイクロソフトの強い意思を表現したものだ。

「企業の外では新しいコミュニケーションインフラが進化しています。Lyncは、それらと既存の企業通信インフラとをつなぐ架け橋の役割を担うもの。その価値をさらに訴えていきます」。日本マイクロソフト Officeビジネス本部エンタープライズプラットフォームグループの小国幸司氏はそう話す。

日本マイクロソフト 小国幸司氏
日本マイクロソフト Officeビジネス本部 エンタープライズプラットフォームグループ エグゼクティブプロダクトマネージャー 小国幸司氏

Lyncが目指すのは、PBXを核とする企業内の既存インフラと、インターネットの世界で進化する新たなコミュニケーションインフラとをつなぐことだ(図表)。

図表 新旧インフラをつなぐLync
図表 新旧インフラをつなぐLync

「このブリッジの役割を多くのお客様に理解していただけたことがLyncの成長要因」と小国氏。このブリッジの先をさらに広げ、普段の業務で使用しているアプリケーションから社外の同僚やパートナー、顧客ともシームレスにつながるインフラを企業に提供することが、今後の戦略の軸になる。だからこそ、「ユニファイド」ではなく「ユニバーサル」なのだ。

この方針は今に始まったものではない。象徴的なのが、2011年に買収したSkypeとLyncとの連携だ。昨年すでに両者のユーザー間で音声通話/IMを可能にしている。日本国内での利用例は非常に少ないものの、海外ではこのLync-Skype接続は活発に使われており、その利用に必要なドメイン名の登録は1万件を超えた。これは、1万社に近い企業がLync-Skype接続を利用していることを意味する。

このSkypeが、ユニバーサルコミュニケーションの実現に向けたキーになる。昨年度から、マイクロソフト社内の組織上もLyncおよびLync OnlineのチームをSkype Divisionに統合。LyncとSkypeを合わせてコミュニケーション分野を専門に取り組む部門となった。

今後は、このLync-Skypeチームがユニバーサルコミュニケーションを具現化していく。そこで重視しているのが次の5つの戦略だ。

(1)仕事とプライベートで一貫した操作性を提供する
(2)あらゆるアプリケーションからアクセスできる基盤
(3)マルチデバイス対応
(4)ビデオ通話の強化
(5)クラウドで世界につながる

Lync
マイクロソフトは、コミュニケーションのトレンドの変化に合わせた「新たな時代のエンタープライズコミュニケーション」を提示、その実現に向けて5つの取り組みを進める

企業の枠を超えてつなぐ

(1)の仕事とプライベートで一貫した操作性を提供するについては、SkypeもLyncも単一のクライアントから音声通話、IM、ビデオ通話、会議が利用でき、ユーザーはいつも同じ感覚でコミュニケーションが行える。

(3)のマルチデバイス対応(LyncはWindows Phone、iOS、Android、Mac、Windowsに対応している)によって、デバイスが変わってもその体感は変わらない。

(2)のあらゆるアプリケーションからアクセスできる基盤については、ExchangeやSharePoint、Lync等の企業向けアプリだけでなく、Officeや個人用Webメール「Outlook.com」、検索エンジン「bing」などからもコミュニケーションを可能にする。家庭用ゲーム機「Xbox One」にもSkypeが搭載され、いたるところにマイクロソフトのコミュニケーションプラットフォームが展開されることになる。また、Lyncの機能を拡張するための開発環境も強化する。これにより、Webブラウザからの電話発信など、Lyncの利用シーンを拡大することが容易になる。

(4)のビデオ通話に関しては、近々行われるLyncのアップデートによって、前述のLync-Skype接続でビデオ通話もサポートする予定だ。また、専用端末型のテレビ会議システムとLyncの接続も強化される。これにより、企業も一般ユーザーも時間・場所、デバイスを問わずにビデオ通話を手軽に行えるようになる。

そして、(5)のクラウドで世界につながるに関して、冒頭の通りLync Conference 2014においてLync Onlineの機能強化が発表された。

月刊テレコミュニケーション2014年5月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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