SIerたちのM2Mビジネスの実像[第1回]――「中小M2M」を狙う日本システムウエア

SIerがM2Mビジネスで成功するには、何が必要なのだろうか。不可欠といえるのは、既存事業の強みを活かすことと、他業種との連携の2つだ。ユーザー企業や他事業者との協業で新たなビジネスモデルを組み立てたSIer3社の取り組みを連続レポートする。今回は、日本システムウエア(NSW)のケースを紹介する。

「当社の特徴は、一般的なITソリューションと、デバイス/組み込み開発を行うプロダクトソリューションという2つの事業を持つことです。両事業のシナジーを生み出せるという意味で、M2Mは強みを活かせる親和性の高いビジネスです」

日本システムウエア(NSW)でITソリューション事業本部クラウドサービス部長を務める竹村大助氏はそう話す。ITシステムの受託開発に加え、デバイスの開発等も手掛ける強みを活かしてM2M事業に取り組んできた同社は2013年5月、M2Mプラットフォームサービスの提供を始めた。それまでは顧客企業の要望に応じて個別にM2Mシステムを開発してきたが、システムの基盤部分の共通化によってM2Mビジネスをさらに拡大するのが狙いだ。

「開発コストは10分の1、開発スピードは10倍以上」

NSWのM2M事業の最大の特徴は、「Toami(トアミ)」と名付けたこのプラットフォームにある。米ThingWorx社のM2M開発基盤製品を多言語対応にし、独自機能とサポートを付加したもので、ほとんどプログラミングをすることなくM2Mアプリを開発できるのが利点だ。PC画面上で、センサーからの情報を表示するウィジェット(グラフや状態表示、グーグルマップ等)をドラッグ&ドロップ操作で配置していくだけ。個別開発していたケースと比べて、「当社比で開発コストは10分の1、開発スピードは10倍以上早い」(竹村氏)。

日本システムウエアの「Toami」のアプリ開発画面
日本システムウエアの「Toami」のアプリ開発画面

NSWはこのToamiで、管理デバイス数が10個程度からの小規模M2M市場を開拓していく考えだ。現在は、社会インフラの高度化を目指した大規模なM2Mに注目が集まっているが、「IoT(Internet of Things)の世界になれば、民間企業が100個あるいは10個程度のデバイスを対象に行う『中小M2M』が絶対に増えてくる」との考えから、コストをかけず迅速にアプリが開発できるThingWorx社の基盤製品を採用した。中小のM2Mを掘り起こすには、スモールスタートできる環境が不可欠だからだ。

Toamiで作成した冷蔵庫遠隔管理のデモ画面
Toamiで作成した冷蔵庫遠隔管理のデモ画面

テスト用途の簡単なアプリであればすぐに作れるため、顧客企業と細かく要件を詰める前にアプリ画面を作って、具体的なイメージを示しながら提案できる。また、顧客もNSWもコスト負担が極端に少ないので、「当社が無償で画面を作り、お客様のM2Mビジネスの収益が上がり始めた段階でレベニューの一部をいただくというかたちも可能」と竹村氏は話す。市場の立ち上げ期に適したアプローチが自在に取れることが最大の強みといえる。

実際に、レベニューシェア型のビジネスもすでに動き出している。建設コンサルティング事業者と業務提携し、小規模橋梁の管理を行うソリューションを提供するものだ。橋梁にセンサーを取り付け、NSWがひずみ等のデータを収集し、建設コンサルティング事業者が劣化や異常の有無等を監視するほか、保全計画を自治体に提供する。「地方自治体の老朽化した小さな橋」がターゲットだ。

このような非IT系事業者とのパートナーシップを基本に、今後もM2Mの適用領域を開拓していく。現在はテスト段階のものを含めて10数個のアプリを手がけているが、2014年度から本番稼働を予定している顧客もあり、「新年度はビジネスが加速していくはず」と竹村氏は期待している。

月刊テレコミュニケーション2014年3月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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