今後のLTE戦略の最大のテーマはルーラルエリア
このドコモの取り組みで重要なのが、150Mbpsサービス導入によってiPhone 5s/5cやAndroidの対応端末以外のユーザーも恩恵を受けることだ。
NTTドコモで基地局の整備を担当する無線アクセスネットワーク部の平本義貴担当部長は「これらの端末がネットワークにアクセスしてきた時に最もスループットが出る帯域を選んで接続する仕組みになっている」と説明する。すなわち、iPhone 5s/5cへの買い替えが進めば、都心部のトラフィックが4車線分の広い帯域のある1.7GHz帯にオフロードされ、その結果、非対応端末で2.1GHz帯のLTEを利用しているユーザーの通信環境も底上げされることになる。
NTTドコモ 無線アクセスネットワーク部 無線企画部門 担当部長 平本義貴氏 |
加えて、重要な点が、iPhone 5s/5cは1.7GHz帯と2.1GHz帯に800MHz帯を加えた3バンドを、また2013年冬モデル以降のAndroid端末は、これらに1.5GHz帯を加えた4つのLTE帯域に接続できることだ。
ドコモは4つの帯域のLTE基地局の整備を急ピッチで進めると同時に、3バンド/4バンド対応端末を投入し、各バンドのトラフィックを平準化させ、周波数資源を有効活用しようとしているのだ。また伝送特性に優れる800MHz帯と、高速通信が可能な1.7GHz帯といった性格の異なる周波数帯域から最も品質のよい周波数に接続することで、ユーザーの通信品質――「つながりやすさ」を大幅に向上させることも可能になる。これが「クワッドバンドLTE」としてドコモが訴求している戦略の核心となる。
今年4月には東名阪などで1.5GHz帯の制限が解除され、運用帯域が5MHz×2から15MHz×2に拡大されるので、大都市での通信環境はさらに改善される見込みだ。
2014年度のドコモのLTEインフラ戦略の最大のテーマは、他社に出遅れる形となっていた山間部などのルーラルエリア(閑散地区)への展開だ。すでに人口カバー率100%を実現している3Gの基地局設備に重層させる形で、2014年度中に3G相当のLTEエリアを整備する計画だ。
2015年にはアドオンセルも導入
2015年以降に向けたドコモのネットワーク戦略の課題は、やはり急増するデータトラフィックへの対処といってよいだろう。
ドコモは、基地局にアンテナを6つ設置し、カバーエリアを6分割して大容量化を図る6セクター基地局を多用することなどで、他社より格段に容量の大きなネットワークを3Gで構築しており、LTEの展開でもこれが大きな強みとなっている。最近は基地局自体のマルチバンド化による容量拡大にも注力している。
とはいえ、年2倍という増加ペースを考えると早晩限界は来る。平本担当部長はその対策の1つとして「2015年に『アドオンセル』の導入を考えている」という。
これは、電柱やビルの壁面などの低い位置に基地局を配置、この極小セルでユーザーが集中する場所のトラフィックを吸収するもの。スループットの大幅な向上や容量拡大が見込める。複数帯域の周波数を束ねて運用するキャリアアグリゲーションで通常の基地局の電波と一体運用することで、高い通信品質を実現する。極小セルの帯域には1.5GHz帯が想定されているようだ。