IOWN APNで2種類のQKDと47Tbps超のデータを多重伝送 東芝・NEC・NICTが実証

東芝、NEC、情報通信研究機構(NICT)が、IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)を活用し、47.2Tbpsに相当する高速データ通信用の光信号と2種類のQKD(量子鍵配送)信号を多重伝送する実証に成功した。通信キャリアの基幹ネットワークでQKDを実現できる可能性を示すことで、広域かつ低コストな量子暗号通信サービスの実現につなげていきたいとした。

東芝、NEC、情報通信研究機構(NICT)の3者は2025年7月28日に記者説明会を開催し、IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)上で、2種類のQKD(量子鍵配送)信号を波長多重伝送する実証に成功したと発表した。

量子コンピューターが実用化されると、現在広く利用されている暗号アルゴリズムは短時間で解読されてしまう可能性が高い。そのため、暗号化されたデータを傍受・保存し、量子コンピューターの実用化後に復号する「Harvest Now, Decrypt Later(今収集して後で解読:HNDL)」が新たな脅威になりつつある。こうしたリスクへの対応策の1つが、QKDだ。

東芝 総合研究所 AIデジタルR&Dセンター コンピュータ&ネットワークシステム研究部の勝部泰弘氏は、「QKDで共有・伝送した暗号鍵を用いることで、確実に盗聴を検知できる」と説明した。

QKDでは、光の最小単位である「光子」に暗号鍵の情報をのせて送信する。第三者が通信を盗聴しようとすると、光子の状態が変化し、それが受信者・送信者に検知される仕組みだ。また、光子状態の完全な複製も不可能であるため、「理論上は絶対安全」とされている。

量子暗号通信の基本的な仕組み

こうした特徴から、QKDは量子コンピューター時代でも安心して使えるセキュリティソリューションとして注目を集めており、これまでもQKDを用いた拠点間通信の実証などが行われてきた。しかし、「QKD信号を理想的な条件で伝送するため、ダークファイバーを用いてQKD専用のネットワークを構築しなければならず、大きな導入・運用コストがかかっていた」(勝部氏)。

QKDを用いた従来の拠点間通信の課題

同氏は、「通信キャリアが今後広く展開していくと見られる光ネットワークにQKDを統合・多重化」することが、広域かつ低コストに量子暗号通信サービスを提供するうえで重要だと語り、まずはIOWN APNでQKD信号を伝送する実証を行うことにしたという。

IOWN APN上にQKD鍵配送機能を統合

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