デジタルサイネージについても、ディスプレイ上部に付属するカメラで視聴者を撮影して年齢や性別の識別ができる。電話機の例と同様、視聴者の属性に合わせた情報配信を行うことで販促やプロモーション効果が期待できるという。
また、宿泊客へのサービスの向上だけでなく、従業員の業務効率向上にも活用できる。基幹業務サービスと電話が連携することで、チェックアウト時に客室清掃員の携帯電話にチェックアウト情報を通知したり、あるいはチェックイン予定の宿泊客情報を電話機の液晶画面に表示して従業員に情報提供するといった運用を想定しているという。観光客であればガイドブックを備え、ビジネスでの来泊であれば新聞を用意するといった具合だ。
「ホテル総合クラウドサービス」による宿泊客へのサービス向上イメージ(クリックして拡大) |
NEC初、「音声システムをサービスで」
基幹業務サービスは、ホテルの規模や目的別に「ベーシック」「スタンダード」「ハイグレード」の3種類の基本メニューを用意する。その他に、前述のように各種の機能メニューがあり、ユーザーは利用する機能を選択できる。
音声(PBX)サービスは、PBX利用の基本機能を提供する基本サービスと、ホテル内の機器を遠隔監視する「Ping監視サービス」などのオプションメニューが用意されている。デジタルサイネージについても、コンテンツ配信基盤サービスに加え、コンテンツ作成支援サービスなどの複数のメニューを提供する。
基幹業務サービスの機能はNECが運営するデータセンターに設置されたサーバーからマルチテナント式で提供する。石井氏によれば、「ホテル基幹システムの環境構築期間を70%短縮できる。導入・運用コストについても、基幹システムとPBXを合わせて30%から35%低減できる」という。また、「PBXやサーバーの設置スペースが不要になるため、空いたスペースを有効活用できる」のも利点となる。
また、音声サービスについては、NECのSIPサーバー「UNIVERGE SV8500」をNECのデータセンターに設置。ユーザーはシングルテナント式で利用する。NECの担当者によれば、「本サービスはチェーンホテルをターゲットに考えており、同一チェーン内の複数ホテルで1つのSV8500を共用する形が主になる」という。
いわゆる通信事業者のIPセントレックスサービスでは1企業に対して1つのサーバーを用いるため、サービス料金が割高になる傾向があった。だが、本サービスでは、同一チェーン内に限られるものの、複数ホテルで1つのサーバーが共用できるため、「割安なサービス料金で提供できる」(同担当者)。
なお、PBXによる音声システムをこのようにサービス型で提供するのは同社初の試みだ。今回は「ホテル」という特定業種向けサービスの一部に位置付られるが、今後は一般的な企業向けにも、音声システムをサービス型で提供する形が増えそうだ。