――無線LAN(Wi-Fi)は長年、通信業界では補助的な位置づけでしたが、スマートフォン時代を迎えて急速に存在感が高まっています。
小林 当社は設立から今年で11年になります。その間、無線LANは機器に組み込む通信チップが安価で、しかもライセンスが不要ということもあり、ゲーム機や音楽プレイヤー、デジカメなどさまざまな機器への搭載が進んできました。しかし、携帯電話とは異なり基地局から電波が届く距離が短く、特定の場所におけるデータ通信トラフィックの“バイパス”としての役割にとどまっていました。
ところが、この数年間でスマートフォンの普及が急速に進んだことに伴い、通信キャリアのデータ通信ネットワークの容量が逼迫する事態が発生した結果、通信キャリアはスマートフォンに標準で搭載されているWi-Fi機能に着目し、データ通信トラフィックのWi-Fi網へのオフロードを進めています。それに合わせて当社の無線LANアクセスポイント(AP)は昨年3月時点の約1万から、今年3月には約12万と、1年間で12倍に増えました。まさにスマートフォンブームのおかげです。
――通信キャリア各社がAPの設置を進めており、KDDIは20万カ所、ソフトバンクモバイルグループは40万カ所になります。
小林 自社のWi-Fi提供能力を訴求する際にはAPの数を訴求する競争になりがちですが、お客様が使いたいところで使えることを重視すれば、本当に重要なのは、AP数と利用可能者数(1つのAPを1日当たり何人が利用するか)の掛け算で導き出される「無線LANスポットリーチ数」を指標とすることだと思います。この指標が最大となるようにAPを設置することは、お客様の生活動線上にWi-Fiエリアを拡大することになります。
当社が無線LANでのネット接続事業を開始した当初、大手通信キャリアの間では「無線LANビジネスなんかやるものではない」との見方もありましたが、彼らが見向きもしなかったからこそ、我々は人が多く集まるところに最初にAPを設置することができました。今では、大規模施設としては都市圏の駅、全国の空港、大手ホテル、大規模オフィスビルをほぼ網羅しています。
また、ピンポイントの施設として、カフェやコンビニエンスストア、ドコモショップなども幅広くカバーしています。それらを合わせると、無線LANスポットにリーチできる端末数は約1億端末超になる計算です。これは大きな価値があると思っています。