クラウド型メールサービスのメリット
急速に普及するクラウドコンピューティングの中でも、特に需要が高いサービスの1つに「クラウド型メールサービス」がある。これはサービス事業者が提供するクラウド基盤上でメール機能を使うことができるサービスで、自社でメールシステムを構築する場合と同じメール機能やセキュリティ環境を利用できる。
では、自社でメールシステムを構築する場合(オンプレミス)と比較して、クラウド型メールサービスにはどのような導入メリットがあるのだろうか。まず、メールサービスに限った話ではなく、クラウドコンピューティング全般のメリットから紹介すると、以下のようになる。
その1:導入コストの削減
ハードウェアやソフトウェアなどのシステム導入コストがかからない。また、システムを増強したり、機能強化を図ったりするときもハードウェアやソフトウェアを自前で追加する必要がない。
その2:運用コストの削減
自社で設備を抱えることがなくなるので、システム運用コストも削減できる。従って、システム運用担当者はほかのシステム業務に専念できるようになる。
その3:迅速な立ち上げが可能
システム設計などの手間がかからなくなることから、サービス申し込みから短期間で、各種機能を利用し始めることができる。また、機能変更にも柔軟に対応できる。
ただし、次のような課題が発生することに注意する必要がある。
・社外にシステムが設置されていることからセキュリティの低下を招く懸念がある。
・サービス事業者にIT基盤を依存することになる。例えば、突然サービス事業者がサービスを終了すると、業務が全面的にストップしてしまう。
こうした懸念材料を払拭するために、サービス事業者はいろいろな取り組みを行っている。そして、最新のクラウド型メールサービスには、前述したクラウドコンピューティングのメリットに加えて、次のような導入メリットを享受できる。
その4:メールセキュリティに精通した専門スタッフが面倒をみてくれる
メールシステムを運用していく中でスパムメール対策は最も手間がかかる作業の1つだが、メールサービスでは日々進化を続けるスパムメールへの対策をタイムリーに実施してくれる。また、新たに出現するセキュリティ脅威に対しても迅速な対応が可能で、複雑なセキュリティ対策を一体的に実現できる。
その5:必要な機能だけを利用できる
最近のメール環境では、メール配送機能だけでなく、Webメール機能、誤送信防止機能、そしてコンプライアンスの強化を図るのに役立つメールアーカイブ機能など、沢山の機能が提供されている。メールサービスならこうした豊富な機能の中から、自社ニーズに合わせて、必要な機能だけを好きな期間だけ利用できる。
その6:常に最新の機能を利用できる
社内にメールシステムを構築した場合、構築した当初は最新のシステムであったとしても、バージョンアップを繰り返し行わない限り、数年後にはシステムが陳腐化してしまう。これに対し、メールサービスの場合には、サービス事業者側で常に機能の改修、追加を行っているので、いつでも最新機能を利用し続けることが可能だ。もちろん、バージョンアップの度に追加料金を払う必要もない。
その7:携帯電話からも利用できる
ほとんどのメールサービスは、PCだけでなく、携帯電話や Web ブラウザからもメールの送受信・閲覧ができ、場所・時間を問わず、必要なメール情報をその場で確認することが可能だ。
フリーメールサービスとの違い
無料で使えるメールサービスとしてGoogleのGmail、MicrosoftのHotmail、Yahoo! JAPANのYahoo!メールなどが普及しているが、これらのフリーメールサービスと、本稿で取り上げている企業向けクラウド型メールサービスとの間には、一体どのような違いがあるのだろうか。利用できるメール容量やアカウント数の違い、広告表示の有無のほか、以下のような違いがある。
・会社独自のドメイン名を使用できる
まず、一番大きな違いはフリーメールサービスの場合には、そのサービス事業者固有のドメインを使うことになり、自社で取得しているドメインを利用することはできない。これに対し、企業向けサービスでは会社独自のドメイン名を使用できる。例えば、フリーのGmailの場合、user@gmail.comといったメールアドレスになるが、企業向けのGoogle AppsのGmailを使うときは、user@company.com のような会社独自のドメイン名で登録でき、既存のメールアドレスを継続して使用することが可能だ。
・ユーザー管理機能を使用できる
企業向けクラウド型メールサービスには、システム管理者のためのコントロールパネル(ユーザ管理機能)が提供されており、システム管理者はこのパネルから企業ドメイン全体のユーザーアカウントを一元管理することができる。
・稼働率(SLA)が保証されている
フリーメールサービスの場合、私的利用の個人ユーザーを対象にしていることから、稼働率は保証されていない。これに対し、企業ユーザーを対象にしているサービスでは、万一サービスが停止すると大きなビジネス損失が発生する危険性が高くなることから稼働率が保証されている。