NTT西日本 代表取締役社長 北村亮太氏
――NTT西日本のグループ会社において発生した約900万人の顧客情報の不正流出事件を受けて、4月1日付けで社長に就任されました。社長として、どんな使命を果たしていくお考えですか。
北村 「セキュリティファーストカンパニー」へと生まれ変わり、信頼回復に努めることが私のミッションです。大切なお客様の情報をお預かりする企業として、再発防止策に徹底的に取り組んでいきます。
今は再発防止策を着実に実行している状況ですが、2月に公表した対策で中心となっていたシステムや体制の強化といった“ハード面”だけではなく、「情報セキュリティをしっかり守っていくんだ」という意識を社員に植え付ける“ソフト面”の対策も大変重要だと考えています。そのうえで必要なのは、「何でも言い合える」「悪い情報も早く上がってくる」風通しの良い組織風土です。そのため、組織風土の変革にも力を注いでいきます。
また、今回このような事案を起こしてしまい、社員からは自信喪失してしまった様子が少し見て取れます。そこで社内に向けては、「そんなことはないんだ。信頼回復に向けた取り組みを徹底的にやっていけば、我々はまだまだいけるんだ」と、私が強くメッセージを発していくことも大切だと思っています。4月にNTT西日本へ来てから30支店全部を回り、すでに多くの社員と会話しましたが、少しずつ手応えを感じています。
「やることを増やした」
――固定通信からモバイルへのシフトが続いており、地域通信事業を取り巻く環境は決して易しいものではありません。こうしたなか、NTT西日本をどうやって成長させていきますか。
北村 固定電話から光サービスへの転換を図ってきましたが、回線数を増やすだけでは厳しい状況になってきています。ですから「通信プラスα」──通信の周辺領域を含めて、どれだけ事業領域を拡大していけるかがポイントだと思っています。
30支店を回る中で、地元の首長さんなどともいろいろと話をさせていただく機会がありましたが、NTT西日本グループへの期待感がひしひしと伝わってきました。
自治体のガバメントクラウドへのリフトだったり、ICTを活用した地域経済の活性化のお手伝いだったり、地域の課題解決や地域の新しい価値創造にチャレンジし、我々のビジネス領域として広げていくことが大事だと思っています。
――NTT西日本や、3月まで北村社長が副社長を務めていたNTT東日本は近年、地域のDXに大変注力してきました。ただ、今年5月に発表したNTT西日本の2023年度決算のプレゼンテーション資料を見て、地域DXへの取り組みに関するアピールが以前より若干弱まった印象も実は受けていたのですが、そんなことはないのですね。
北村 弱まったのではなく、「やることを増やした」というのが正しい言い方だと思います。地域活性化のビジネスをサステナブルにしていくためには、我々自身も一緒になって成長していかなければいけないからです。
固定通信市場はご存じの通り、毎年200~300億円ずつマイナスになっています。その埋め合わせをしたうえで、さらに成長していくためには、いろいろな施策を同時並行的に実行していくことが必要です。そこで5月の決算発表では、持続的な事業成長に向けた取り組みとして、5本柱を掲げました(図表)。
図表 NTT西日本の持続的な事業成長に向けた5本柱の取り組み
今までは法人事業や新規事業のところだけを抜き出してアピールしてきましたが、それに加えて既存事業も拡大していく必要があります。プラスαしていくということであって、これまで言ってきたことがトーンダウンしたわけでは全くありません。