「日本でもスマートメーターの導入実験が進んでいるが、通信方式の検証がほとんど。収集したデータを業務にどう活用しているかというと、まったく活用できていないのが日本の状況だ。電力自由化が進んでいる海外とは差が開いているのが実態である」
SAPジャパンが2012年6月19日に開いた記者説明会でこう述べたのは、同社でスマートイノベーション推進室長を務める松尾康男氏。現在のところ日本は、スマートメーターの活用で大きく出遅れてしまっているようだ。
だが、発送電分離を含む電力自由化の動きは、日本でも震災をきっかけに活発化している。つまり、これからいよいよスマートメーターの活用も本格化していくと期待されるわけだが、それでは単なる電力使用量の「見える化」以外に、一体どのようなことがスマートメーターで可能になるのか。会見では、“電力自由化”先進国における具体例が紹介された。
電力自由化が進む海外諸国と比べ、スマートメーターの活用で遅れている日本 |
競争優位の確立にスマートメーターを活用する英国の事例
まず松尾氏が取り上げたのは、British Gasのブランドでガス1000万件、電力600万の顧客を有する英国最大のガスおよび電力事業者Centricaのケースだ。
同社は、スマートメーターを活用したサービスを業務用顧客向けに提供しているが、そのきっかけはスマートメーターのパイロットユーザー6000件の調査から判明した次の事実だったという。実に、46%の電気が19時~8時の営業時間外に消費されていたのだ。
このなかには冷蔵庫の電力消費など必要なものも当然含まれているが、駐車場の照明やディスプレイ照明といった無駄な電力消費も数多い。一般的な店舗の場合、平均で年間約15万円の節約が可能なことが分かったそうだ。
そこでCentria/British Gasが始めたのが次のサービスである。顧客宅に無料でスマートメーターを設置。自社/自店舗の電力使用量の見える化だけでなく、似た条件の事務所や店舗などと比較できるベンチマーク機能も備える。さらに、British Gasの専門家による節電アドバイスのサービスを提供しているほか、省エネ機器の販売にもつなげているという。
Centrica/British Gasのスマートメーター活用サービスの概要 |
電力自由化が進んだ英国の電力市場では主要6社がしのぎを削っているが、このスマートメーター活用サービスはBritish Gasにとって、新規顧客獲得や既存顧客囲い込みのための施策になる。また、節電を促す同サービスは売上ダウンをもたらすが、サービスや省エネ機器の販売などによりそれを補う手段としても活用されているのである。