プレゼンスは必須
もう1つ、欠かせない要素がある。プレゼンス確認の仕組みだ。
場所と時間の制約がないということは、逆に言えば、誰がどこで何をしているのかがつかめないことを意味する。コミュニケーションが疎遠になるどころか、伝言メモ1つ渡すのもお手上げだ。外出中の社員の帰社を待つといったことも難しい。
PC画面上にプレゼンスを表示するソリューションは多々あるが、フリーアドレスを目指すのならば、バディリスト形式のものよりも、座席レイアウト上で社員の居場所が確認できるソリューションがオススメだ。
NECネッツエスアイの「zasekiNavi」と、日立製作所の「座席ナビ」はどちらも、フロアレイアウト上に社員の所在とステータスを表示するものだ。名前や所属などからの検索も容易で、さらに、コミュニケーション機能も磨かれている。
その1つが、伝言メモだ。テキストメッセージを送受信する機能を備えており、別途メールやIMは必要ない。zasekiNaviは写真のように「机の上」を再現。また、音声でメモを読み上げる機能を備えており、外出中でも指定の番号に電話するだけで、伝言を音声で確認できる。PCがないときや移動中などに便利だ。
NECネッツエスアイの「zasekiNavi」。伝言メモは音声読み上げ機能により電話でも確認できる |
座席ナビは先般、機能強化を行った。不在者を登録しておくと帰席時に通知してくれる「お知らせ通知」機能を追加。社員の所在が掴みにくいフリーアドレス制の弱点が補える。
日立製作所は機能強化した「座席ナビVer.2」をリリース。操作性の向上、大規模化への対応などを図った |
「環境対策」を変革の好機に
改正省エネ法や環境確保条例では原則として、外での移動に要したエネルギーは対象外だ。そのため、拠点間の移動や出張をなくしても法対策とはならないが、経費と時間の削減には大きな効果を発揮する。
どのくらいの効果があるのか。再度NECの例を挙げよう。図表2は、NGNのテレビ電話機能により従量課金方式でテレビ会議を利用した効果を示したものだ。導入時は開発中の製品であったため初期費用は拠点当たり1000万円と高くついたが、約4カ月で回収できたという。
図表2 ビデオ会議の実運用での効果(クリックで拡大) |
以上、ワークスタイル変革とエコを両立するポイントについて見てきた。厳しい経済環境の中、「エコ」を目的に投資をすることは難しい。また、環境対策に最も重要なのは、社員の意識とモチベーションである。全員が参加する意欲がなければ、たった1%のCO2削減にも苦痛が伴う。
であれば、社員の意欲を高めるためにも「綺麗で働きやすいオフィスを作る」ことにこそ取り組むべきだろう。ここまで述べてきたことはワークライフバランスを実現する取り組みでもあり、環境貢献とともに対外的なアピールにつながる。有形無形の効果が期待できるのである。
紙をなくすという第一歩目から、ハードルは低くない。だが、高いコスト削減効果と、環境規制の厳格化は、ユーザー企業の経営層の背を押す格好の材料となる。環境対策ソリューションの商機としてだけでなく、もっと広い視野で捉えれば、ワークスタイル変革の好機とすることも可能なはずだ。