あと1%削減するために、何かできることはないか――。
企業の総務部門や環境対策部門が慌しくなっている。言う間でもなく、2010年4月から環境規制が本格化するためだ。改正省エネ法の施行と、東京都におけるCO2排出削減等の義務化である。事業所は具体的なエネルギー削減計画を立てなければならない。
多くの企業では、空調は28度に保ち、蛍光灯も本数を減らしてこまめに消す、「定時退社日」を設けて一斉に照明・空調を落とす、といった地道な取り組みが続いている。
「みなさん環境対策について熱心に勉強されている。『もっと情報がほしい』という声も良く耳にする」
環境対策ソリューションを提供するNECマーケティング本部環境ビジネス企画グループの轟由美子主任は、ユーザー企業の状況についてそう話す。
エコを実現するためには投資が必要だ。機器設備の入れ替えはもちろん、空調・照明の節約を徹底させるための見回りを行うケースも多いが、これも立派なコストである。省エネも今や、投資対効果が厳しく問われる。
もう1つ重大な問題がある。省エネが本来業務の効率性を阻害してはならないということだ。エコとビジネスの両立。難しい課題である。環境負荷を軽減し、かつ効率的に働くにはどうすればいいのか。ICTを活用して、そんな“スマートなオフィス”を実現する方法について考えてみる。
オフィスにおける5つの環境対策
空調や動力設備の入れ替えを除けば、オフィスにおける環境対策としては次の5つが考えられる。
(1)省電力機器への入れ替え(照明・IT/ネットワーク機器等)
(2)エネルギーマネジメントシステム(EMS、エネルギー使用量の監視・制御を行う)の導入
(3)消耗品(紙・トナー等)の削減
(4)人・モノの移動の削減
(5)オフィススペースの削減
業務に及ぼす影響に着目すると、(1)と(2)は機器やシステムの導入・更改により実現されるもので、コストはかかるが、社員の“働き方”には大きく影響しない。その意味で「エコとビジネスの両立」を目指すに当たって手をつけやすい対策と言える。
一方、(3)~(5)を実現するのは簡単ではない。“影響”どころか、ワークスタイルそのものに大きな変化を強いる。紙、人・モノの移動、執務スペースという仕事になくてはならない要素を削るのだから当然だ。
だがその分、効果も大きい。
紙を削減できれば、購入費が浮くだけでなくオフィス内の多大な保管スペースが空く。遠隔会議システムなどで移動を削減すれば、エネルギーとともに交通費や出張費が浮く。外出先や移動中、在宅でも仕事ができるテレワーク・モバイルワークも同様だ。さらに業務時間が短縮できれば、その分残業が減り、照明や空調の稼働時間も短くなる。
スペースの利用効率が高まり面積が減らせれば、照明・空調の数も当然減る。なによりオフィスの固定費の大部分を占める賃料も削減できる。企業規模によっては年間数千万から数億円の削減も不可能ではない。
どの企業にも“埋蔵金”はあるはずだ。それが、ワークスタイルを変革するためのICTソリューションの原資になり得る。