パックネットサービス・ジャパンは2011年11月29日、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービス「Pacnet CDN」の提供を開始した。従来からパックネットはCDNを提供してきたが、これまでは他社のCDNの再販だった。しかし今回発表したPacnet CDNは同社自前のCDNとなる。
Pacnet CDNのサービス概要 |
パックネットは、アジア地域にフォーカスして海底ケーブル事業やデータセンター事業を展開してきた通信サービスプロバイダーだが、なぜCDN市場への本格進出を決めたのか。本社CEOのビル・バーニー氏は、「インターネットの現状を見ると、皆さんが一番困っているのはネットワークの混雑。なかでもアジアは世界最大のブロードバンド市場であると同時に、最も成長率も高い地域となっている。また、欧米ではケーブルテレビで動画を閲覧するユーザーが多いのに対して、アジアではブロードバンドで楽しむ傾向にあるのも特徴だ」と、アジア地域でビジネスを営む同社にとってCDNは非常に有望なマーケットであることを説明した。
では、アカマイ・テクノロジーズやライムライト・ネットワークスといった既存の大手CDNと比較して、Pacnet CDNは何がアドバンテージとなるのだろうか。
バーニー氏がまず挙げたのは価格面である。「CDNの提供に必要な海底ケーブルやデータセンターを我々は自社資産として保有している。このため魅力的な価格で提供できる」という。具体的な料金については明かされなかったが、「かなりインパクトのある価格設定を今考えている」と日本法人CEOの田所博文氏はコメントした。
CDNを支えるパックネットの海底ケーブルとIPネットワーク |
また、CDNテクノロジープロバイダーの米EdgeCast社の技術を採用したことで、技術的にも次の2つの点で優位にあるという。1つはキャッシュヒット率の高さで、これは1つのキャッシングサーバーにより多くのキャッシュ容量を持てる「ディープキャッシング」という技術により実現される。もう1つは、EdgeCast社からライセンス提供を受けたCDN事業者がそれぞれの容量を融通し合える「Open CDN Federation」への参加で、このためパックネットは効率よく大容量のCDNを提供できるとした。
さらに、バーニー氏は「アジア地域の顧客のことをよく理解していること」、「ネットワークからデータセンター、CDNまでを一気通貫で提供できること」などをパックネットの優位点として強調した。
また、日本での販売戦略について田所氏は、これまでの直販およびSIerやホスティング/クラウド事業者経由の再販に加えて、「Web制作会社などにも販路を拡大し、幅広い顧客層にリーチしていきたい」と語った。日本のデジタルコンテンツのアジア進出をCDNによってサポートしていきたいという。
CDNの開始を契機に幅広い顧客層にリーチできるよう、販売パートナーも拡大していくという |