「以前は、おもちゃを購入されたお父さんやお母さんからの電話がほとんどだった。だが、商品の多様化に伴って、今はお客様の年齢層も問い合わせの内容も複雑になっている」
トミカにプラレール、リカちゃん人形、人生ゲームなど、日本人に親しまれるおもちゃを次々と送り出してきたタカラとトミー。2006年に両社の合併により誕生したタカラトミーは少子化、嗜好の多様化といった世の趨勢に合わせ、事業の多角化を進めている。
そのグループ会社であり、アフターサービス等の顧客対応をメインの業務とするタカラトミービジネスサービスの「お客様相談室」には、今日も続々と問い合わせの電話が寄せられている。合併前のトミー時代にオペレーター業務に就き、現在はここで監督の任に当たるカスタマー事業部・平野利枝部長代理は冒頭のように、顧客対応の変化を語る。
対話を止めない
“玩具メーカー”と単純に括るのがはばかられるほどに、雑貨やホビー系商品、数々のキャラクターグッズなど、タカラトミーの商品ジャンルは幅広い。高額商品や、購入客が強いこだわりを持つものも多数あり、問い合わせや苦情の電話のバックグラウンドは実に多彩だ。最近では子供からの電話も増え、“マニュアル的な対応”では立ち行かず、「商品知識だけでなく、電話の声からお客様を見抜き、会話を合わせていく能力が必要な時代になった」(平野氏)。
自身のオペレーターとしての経験から「道具の大切さを痛感していた」という平野氏は昨年末、日本プラントロニクスのワイヤレスヘッドセット「SupraPlus Wireless」の導入を決めた。かねてからの懸案だった、オペレーター席と商品倉庫との距離の問題を解決するためだ。
2.4GHz帯無線により、最大約17mの範囲内でワイヤレス通話が可能な「SupraPlus Wireless」ヘッドセットシステム。最大12時間の連続通話が可能 |
問い合わせや苦情の内容を理解し、的確に対応するには、オペレーターの手元に実物が必要になる。だが、取ってくる間はどうしてもお客様を待たせてしまうことになる。
倉庫はオペレーター室の隣、距離にして数mの近さだ。時間にして数秒。それでも「“待たされている”という印象を与えず、常につながっていることが大切」と平野氏は話す。歩いているときも、棚から商品を取り出すときも、戻るときも常に会話を続ける。与える印象が変わるのはもちろん、聞き出す情報量が増えれば、より良い回答を紡ぎ出すこともできよう。それが「タカラトミーのファンを広げることにもつながる」(同氏)。