新オフィスでソフトフォン試行
さらにタイミングにも恵まれた。インテリジェンスは昨年12月、社内のIT部門と、システム開発等を行うグループ企業を都内の浅草橋オフィスに移転・統合した。グループ内のIT部門を集約する新オフィスを設計するに当たって「新しいモデルケースになるオフィスを創ろうと、やれることは何でも検討した」と業務システム部・サービス企画グループの金島利明氏は振り返る。UC基盤ももちろん、その1つだ。
電話システムについては従来、データセンター内に設置した国内メーカー製IP-PBXを核として、首都圏の11拠点を束ねるIPセントレックス型システムを運用していた(他の拠点は個別にPBXを導入)。浅草橋オフィスでは、旧来オフィスで別系統だったデータ系LANと音声系LANを統合。ソフトフォンの利用に適した環境をまず整え、IPセントレックスシステムと併存するかたちで、Lyncのパイロット環境を構築した(図表)。
図表 Lync Serverのシステム構成イメージ |
通話はIP電話機ではなく、ソフトフォンで行う(PCにヘッドセットを接続)ため、使い勝手はもちろん、PCがOFFの状態では電話が使えないなど環境は大きく変わる。まずは約20名を対象として業務への影響を最小限に抑えながら、Lyncの効果を検証するトライアルを始めた。
プレゼンスで相手の状況を確認し、IM・電話・Web会議から最適なツールを選んで使う――。そうしたUC環境を、ショールームのデモではなく「実際の業務のなかで体験し、UCがビジネスにどのようなインパクトをもたらすのかを確認した」と宮地氏はトライアルの狙いを話す。
導入当初は操作に戸惑うケースも少なくなかったが、平均年齢の若さもあって抵抗感を示す社員は少なく、操作に慣れるとともに徐々にLyncユーザーを拡大した。最初は、他部門とのやり取りが少ないメンバーからスタートし、その後、インテリジェンスの人材サービス事業を支える業務システムの開発部隊にもLyncを展開した。これらの社員は、開発したシステムを利用する営業部門等と頻繁にコミュニケーションを行う。Lyncの活用シーンを、徐々に実戦的な場面へ広げている。
今では、IT部門の社員が浅草橋を離れ、現場のオフィスに出向いて業務を行うケースでもLyncが活躍している。「PCとヘッドセットがあれば、無線LAN経由で場所を気にせず内線電話が使えるメリットが評価されている」と金島氏は手応えを口にする。
PBX運用コスト削減も狙う
今後はいよいよ、Lyncの本格展開に移行する。今年度の上期中にIM/プレゼンスを全社レベルで運用し、それと並行して電話機能をさらに検証。年内には、他部門へもソフトフォンの展開を始める計画だ。
電話もLyncに統合することで、プレゼンス確認から即電話が利用できるようになるだけでなく、IMから電話、電話からビデオ通話といった複数ツールをまたぐ運用もしやすくなる |
将来的には、IPセントレックスに収容されている首都圏の拠点をLyncへと移行させ、個別にPBXを運用している他の拠点についても、耐用年数が過ぎた段階でLyncに束ねていくという。これにより、PBX運用コストの削減も狙う。Lyncに移行することで、電話の運用もActive Directoryに統合し、“ITと電話の二重管理”を廃して運用を一元化できる。
また、社外からLyncを活用するための環境整備もすでに進めている。「Lync Edge Server」を導入し、インターネット経由でLync Serverに接続して外出先や自宅から内線電話やIM/プレゼンス、Web会議が利用できるリモートアクセス環境を構築した。テレワークやモバイルワークの実現も近づいている。
さらに、顧客企業とのコミュニケーションにもLyncを活用する考えもある。人材サービス事業を行うインテリジェンスでは、顧客企業の人事部門との密接なやり取りが不可欠だ。そこで、ビデオ通話やIM、資料共有等を顧客企業の人事担当者とのコミュニケーションに使えば、企業間でIMを使ってお互いを呼び出し、移動することなくWeb会議をするといったことも可能になる。
「お客様に向けて、時間の無駄を省いて業務のスピードを上げるための新サービスの提案も可能になる」と、宮地氏は構想を膨らませている。