現在、フィーチャーフォン(日本における一般的な携帯電話)にインストールして利用するアプリケーションといえば、ほとんどがゲーム等のコンシューマ向けのものである。企業向けに行うビジネスアプリケーション開発の中で、フィーチャーフォンにインストールして利用するアプリケーションが作成されるケースはまだまだ少ない。
昨今、スマートフォンの普及が進んでいるが、ではスマートフォン向けのビジネスアプリケーションはどうなのだろうか? やはりフィーチャーフォンと同様に多くはならないのだろうか?
そこで本稿では、スマートフォンとフィーチャーフォンを技術的な視点で比較し、フィーチャーフォンでは普及しなかったビジネスアプリケーション開発がスマートフォンでは普及する可能性があるかどうかについて考察した。
具体的には、「端末」、「開発プラットフォーム」、「SIerから見たポテンシャル」の3つの観点から、スマートフォンとフィーチャーフォンを比較してみた。その結果が以下の表である。
端末 | 開発プラットフォーム | SIerから見たポテンシャル | |
同等な事項 | ・携帯電話網を利用した通信機能を有する
・文字を高速に大量入力するためのインターフェースがない ・各種センサや位置情報が利用できる ・画面が小さい |
・Eclipse(Java開発用IDEのデファクトスタンダード)で開発を行うことができる
・開発環境を揃えるために、特に費用は発生しない ・エミュレータを利用したデバック実行が可能 ・最終的な動作確認には、実機が必要 |
・専用端末に比べて端末自体の導入コストが低い(端末移行の提案がしやすい) |
フィーチャーフォン(iアプリ)が優位な事項 | ・NFC(近距離無線通信)対応端末が現時点(2011年4月時点)で多数存在する | ・エミュレータがAndroid SDKのものに比べて軽快に動作する
・開発に必要な情報(ドキュメント等)は全て日本語でNTTドコモから入手することができる |
・現状、企業で利用されている台数が多い |
スマートフォン(Android)が優位な事項 | ・フリックやピンチイン、ピンチアウト等の直感的な操作が可能な端末がフィーチャーフォンに比べて多数存在する
・無線LANが利用可能な端末が多数存在する ・PCから派生して成立した端末というイメージがある |
・端末を利用したデバック実行が可能
・開発に有用な情報をインターネットを通じて、全世界から集めることができる ・位置情報取得機能や電話帳機能をアプリケーションから利用する際の制限が少ない |
・世界的に利用されているプラットフォームである
・ノウハウをスレート端末用アプリケーション開発でも流用可能(Android、iOS) |
<注> ※本稿では端末にインストールして利用するアプリケーションを対象とし、Webアプリケーションに関しては対象外とする。 ※本稿の中でアプリケーションの開発プラットフォームに関する比較を行う場合には、下記を対象として行う。 ・フィーチャーフォン:NTTドコモ社 iアプリ(DoJa/Star) ・スマートフォン:Google社 Android SDK 【上記を選定した理由は以下のとおり】 ・iアプリ:国内で最も普及しているフィーチャーフォン用アプリケーション開発プラットフォームであるから。 ・Android SDK:iアプリと同じJavaでの開発環境であり比較対象として適しているから。 |