「コネクティビティ(通信)の料金体系の複雑さが、1つの障壁となっている」。ソフトバンク グローバル事業本部 新規事業統括部 統括部長の工藤裕哉氏は、企業のIoT導入の課題についてこう指摘する。
ソフトバンク グローバル事業本部 新規事業統括部 統括部長 工藤裕哉氏
通信事業者やMVNOから提供されているIoT回線の料金には様々なタイプがある。このうち月額基本料が必要なプランは、IoTの通信量がゼロの月でも支払いが発生する。SIM利用を一時中止する際には、デバイスごとにSIMの個別設定や管理が必要となるうえ、再開時には手数料がかかるケースもある。また、データ通信料が従量課金制の場合、機器トラブル発生時に莫大な超過費用が生じるなど変動幅が大きいためコストの事前予測が難しい。「料金面での様々な不確実要素から事業計画を立案しづらいことが、PoCから事業化へのステップアップを阻んでいる」という。
140以上の国・地域で利用可能
こうしたなか、ソフトバンクは昨年10月、低容量IoT回線サービス「1NCE IoTフラットレート」を提供開始した。
1NCE(ワンス)は、2017年にドイツで設立されたIoT専業のMVNO。世界140以上の国と地域でサービスを展開しており、導入企業は1万社以上、利用実績は約1500万回線にのぼる。
1NCE IoTフラットレートの最大の特徴が、低価格かつシンプルな料金体系だ。日本国内では、最大速度1MbpsのLTE/LTE-Mを1回線当たり10年間一括2000円(税抜、以下同)のプリペイド方式で提供する。
この2000円には、累積500MBのデータ通信のほか250通のSMS、カスタマーポータル(回線管理プラットフォーム)、導入企業のアプリケーションやサービスに接続するためのAPI、IoTデバイス管理ツールなど、IoT通信に必要な機能がすべて含まれる。「追加のコストが発生しないので、IoT通信にかかる費用をイニシャルコストに組み込むことが可能になる。その一方、ランニングコストを大幅に削減できることで、収益性を見通しやすくなる」と工藤氏は説明する。
1NCE IoTフラットレートは、世界140以上の国と地域でローミング通信にも対応している。現地の通信事業者の料金プランに合わせてコストを再計算したり、設計変更を行う必要がないので、IoT製品のグローバル展開においても事業計画を立てやすくなるという。
低価格な料金プランは、ネットワーク、IT(ソフトウェア)開発、販売の各コストを抑えることで実現している(図表)。
図表 1NCEの強みの背景
まずネットワークについては、欧州大手のドイツテレコムとの資本提携により、グローバルで競争力のある回線を調達することが可能だ。海外展開についても同社のローミング先に接続することで、安価に利用することができる。ソフトウェア開発では、IoT分野に絞り込んで開発を行うことで、コストをかけずにサービスを実装する。そして販売では、実店舗展開はせず、オンライン購入を可能にすることで人件費などを抑制している。
このように各分野で余分なコストを極力抑えているが、だからといって「安かろう、悪かろう」というわけではない。
例えばカスタマーポータルでは、データ通信量やSMS件数の上限設定や使いすぎ防止、SIMのグループ管理、SIMの利用状況をリアルタイム受信できるData Stream設定など様々な機能を備える。日本語に対応したサポート窓口も用意されているので、設定方法などをWebや電話で問い合わせることができる。