リモートアクセスに仮想デスクトップ… 震災で注目の「テレワーク環境」はどう作る?

東日本大震災を受けて、企業はBCP(事業継続計画)の根本からの見直しを迫られているが、そこで脚光を浴びているのがテレワークである。災害時や輪番操業時にも自宅などで業務を継続できるテレワーク環境は、どのように構築すればいいのだろうか。

在宅勤務の課題を再整理

NTTアイティとNTTコミュニケーションズへの取材からは、企業が急ピッチでテレワーク環境の整備を進めている姿が浮かび上がるが、注意したい点もある。テレワーク環境の導入自体は比較的容易だが、ツールだけでは在宅勤務はうまくいかない。

社団法人日本テレワーク協会・特別研究員の柴田明氏は円滑かつ効果的に在宅勤務を行うためのポイントとして、「人事労務管理制度の整備」と「コミュニケーション環境の充実」を挙げる。

前者については言うまでもないだろう。就労環境の多様化に対応した労務管理・人事評価制度の有無は、業務効率や従業員のモチベーションにも直結する。在宅勤務はともすれば長時間労働を招きやすく、人事評価や業務の管理も難しい。ICTツールを導入するだけでなく、他社のテレワーク事例を参考に、効果的に運用するためのノウハウと制度も併せて検討することが肝要だ。

もう1点について柴田氏は、「単なる業務指示のようなフォーマルなコミュニケーションはネットワーク越しでも伝わりやすい。だが、テレワークでは常にインフォーマルなコミュニケーションこそが課題になる」と話す。

雑談をしたり、相手の表情を確かめながら意思疎通を図ったり、私たちは普段、対面でさまざまなコミュニケーションを行っている。テレワークではそうしたコミュニケーションが失われがちなため、在宅勤務者が疎外感を感じてモチベーションを低下させたり、あるいは指示・伝達に齟齬を生じたりといったケースが起こりやすいのである。日本テレワーク協会が行ったこれまでの調査でも、ICTではカバーすることが難しい課題としてこうした点が指摘されているという。

【インタビュー】社団法人日本テレワーク協会 特別研究員 柴田明氏
――震災と計画停電を受けて、テレワークへの期待が高まっています。

柴田 2009年に新型インフルエンザが発生した際にも、同じような視点でテレワークを検討する企業が増えました。その際にも問題になりましたが、急に導入しても運用するのが難しいのがテレワークです。通常時から環境を整え、シンクライアントやリモートアクセス、Web会議といったツールを社員に定着させていなければ、いざというときに使いこなせません。在宅勤務に対応した人事労務管理制度の整備ももちろん必要です。すでに実践している企業の事例が参考になるでしょう。

今回の事態では、準備していた企業とそうでない企業の差がはっきりと出るのではないでしょうか。

社団法人日本テレワーク協会 特別研究員 柴田明氏

――急遽テレワークを行う場合、重要視すべきポイントは何でしょう。

柴田 ICTツールを使って技術的にテレワーク環境を整えるのは、今では容易になっています。ただ、気を付けていただきたいのは、コミュニケーションです。

業務の指示などフォーマルなコミュニケーションは、ネットワークを介したバーチャルな環境でもそれほど問題なく通じます。一方、課題になるのが、インフォーマルなコミュニケーションです。例えば、表情を観察したり、ちょっとした雑談も仕事を円滑に回すには必要なように、フェイス・トゥ・フェイスの環境で無意識に行っているコミュニケーションが、テレワーク環境では難しくなります。

長期間にわたって在宅勤務を続けるような場合は、特にその点にも留意すべきでしょう。

月刊テレコミュニケーション2011年5月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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