[シリーズ]ICTを活用して風土改革に挑む! <第2回>【ベルリッツの変革】国境と階層を越えて組織を1つに

シリーズ「ICTを活用して風土改革に挑む!」の第2回は、縦と横のコミュニケーションを駆使して世界550カ所に散在する組織の統合と企業風土の変革を進めるベルリッツの取り組みをレポートする。

世界の社員に“共感”が広がる

ベルリッツの社員にとって、こうしたコミュニケーションシステムを利用することは初めての体験といえるが、すでに社内では「基幹システム以上に重要かもしれない」という声が聞かれるという。特に、意欲的に活用しているのは米国や南米の社員だ。「彼らはつぶやき機能を使ってどんどんメッセージを書き込んでいる」と久保田バイス・プレジデント。同氏自身も、国や職種を越えて「顔も知らない人とコミュニケーションできるようになった」と話す。

バラバラだったベルリッツの社員は今、国を越えて一体化し始めている。例えば、セールス部門の責任者が「あと少しで目標を達成できます。みなさん、がんばりましょう!」というメッセージを投稿する。そのメッセージは自分の国のチームに対して発信されたものなのだが、世界中の社員が共有する。「以前は結果の数字だけを見ていたが、今は、リアルに他の国の社員ががんばっている姿を見ているように感じている」と加古直子ITインフラストラクチャー・プロジェクト課長は話す。社員同士の共感をSPACEがもたらしているわけだ。

今後のテーマは、コミュニケーションの範囲を広げていくことである。その1つが、顧客との接点を果たしているインストラクターがSPACEを利用できるようにすることだ。現在のSPACEの利用者は社内スタッフに限られている。

顧客にとって、インストラクターはベルリッツを代表する存在だ。そのため、SPACEによりベルリッツのポリシーをインストラクターと共有していくことは重要なテーマであるが、課題はインストラクターの雇用形態が国によってさまざまなことである。正社員のインストラクターもいれば契約社員のインストラクターもいる。その働き方も、ランゲージセンターで教えるだけでなく、企業に出向いて教えたりWebべーストレーニングを自宅から行ったりと多岐にわたる。そこで同社は、セキュリティ対策に配慮しながら、モバイル端末からSPACEが利用できる仕組みの導入を検討している。

また、顧客そのものとの関係強化にSPACEのコミュニティを活用することも検討テーマだ。具体的には、コミュニティを通じてベルリッツが提供している多様なサービスを顧客からシームレスに見えるようにすることを目指す。その準備として業務系システムの再構築を進めているところだという。

08年にスタートしたベルリッツの企業変革の現在をベルリッツ自身は、「道半ば」と見る。変革を支えるICT活用についても「ITリテラシーが高い会社ではないので、こまめなサポートが求められる」(久保田バイス・プレジデント)とも語り、社員のSPACE活用度を上げていくための取り組みを着実に進めていく考えだ。

図表3 SPACE導入の効果
図表3 SPACE導入の効果

約70カ国・550拠点の社員全員がグローバルにベクトルを1つに合わせ、新しいビジネスモデルを展開していくために、新しいコミュニケーションシステムを取り入れたベルリッツ――。その挑戦は、業種・規模を問わずビジネスのグローバル化に立ち向かうことを迫られている日本企業に対する示唆ともなっている。

月刊テレコミュニケーション2011年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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