「様々なサービスがエッジへとシフトし、トラフィックもメトロへ移動する。これまでメトロでのトラフィックのやり取りはノース-サウス方向が中心だったが、これからはイースト-ウエストがメインになってくる」
メトロネットワークにおいてこれから起こる変化についてそう語るのは、ジュニパーネットワークス SPアーキテクトの木下功一氏だ。
この変化を示したのが図表1である。サービス提供の基盤がエッジへ移ることで、メトロネットワークを流れるトラフィックは量・質ともに大きく変化する。
図表1 従来のメトロ(左)と新時代のメトロ(右)
調査会社の予測によれば、2025年までに企業データの50%はエッジクラウドに分散(ガートナー)、メトロを流れるトラフィック量は、2021年から2027年で500%も増加する(ACGリサーチ)という。「この状況において、通信事業者/サービスプロバイダーは持続可能なビジネス成長を成し遂げなければならない。従来型の“レトロなメトロ”でそれが実現できるのかが大きな課題になる」(木下氏)
メトロ変革への3つの視点
現在のメトロネットワークはどのような問題を抱えているのか。同氏は次の3つの観点で変革の必要性を指摘する。
ジュニパーネットワークス SPアーキテクトの木下功一氏
1つは、利益ある成長の維持だ。
前述の通りトラフィックが5年余りで5倍にも急増すれば、「現在のコストパービットの構造のままで利益ある成長を維持するのは困難だ」。しかも、より快適な通信サービスを求めるユーザーの期待値は高まるばかりで、品質劣化はすぐに解約につながる。
安全性の維持・向上も、利益ある成長には不可欠だ。エッジクラウドの増加に伴ってネットワークデバイスは分散し、その数も増える。「通信事業者が認知しないデバイスがつながる危険性がある」と木下氏。この新しい脅威への対処が求められる。
2つめは、人材の確保である。ネットワークの保守運用を担う専門人材は不足していく。属人化を解消するため、専門知識の移転・共有も課題となる。「最早、手動オペレーションは持続できない。AI・自動化技術の活用が必須要件だ」(同氏)
最後が環境問題への対処だ。通信事業者は今後、ネットワークの容量・性能向上と省エネを両立さなければならない。帯域需要の増大に応じて通信設備を高性能な製品に入れ替えるという、これまでの単純なやり方は通用しない。
こうした課題を解決するため、ジュニパーが2021年7月に打ち出したのが、「Cloud Metro」という新コンセプトだ。設備投資や運用の手法を抜本的に改革するため、メトロネットワークにクラウドやAI・自動化技術を導入する。
図表2 Cloud Metroのビジョン
そして2022年7月には、このCloud Metroを実現するためのソリューションを大幅に拡張することを発表した。どのようなアプローチで新時代のメトロネットワークを実現しようとしているのか。その一端を見ていこう。