「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る《3-1》「セクショナリズムの壁」を打破するために生まれたNexti――NTTデータ流ソーシャルテクノロジー

「Twitter」や「SNS」に代表されるソーシャルテクノロジーが、企業でも使われ始めた。厳しい経営環境を乗り切るために、組織へ組み込み、コミュニケーションの活性化に役立てようとする企業も現れている。本連載では、2009年のダボス会議で「持続可能な100社」に選ばれたNTTデータの取り組みを中心に、ソーシャルテクノロジーのメリットから活用のポイントを分かりやすく紹介する。

3.1.2 大企業病に対する危機感からセクショナリズムの打開策を検討

「NTTデータの社員一人ひとりは優れた人が多いはずなのに、いざ会社全体を見渡すと、全社としての一体感やスケールメリットを感じにくい」。これが、リスペクターズが行動ガイドラインを議論した際、多くのメンバーが共通に感じた問題意識でした。異なる専門知識やスキル、バックグラウンドを持った社員同士が組織や役割を超えて協働できれば、規模のメリットを最大限に発揮して、より高い価値を顧客に提供することができると考えていました。

ただし一方で、ITサービス業という業種柄、社員はプロジェクトベースで行動し、目の前のタスクをこなすことで精一杯という現実があり、プロジェクトを超えた部署の社員と“助け合う”という風土が生まれづらい状況にありました。「隣の部署でどんな社員がどんな仕事をしているかが見えづらい(意識したこともない)」「社内の打ち合わせで初対面の社員同士が名刺交換をするケースもある」「同期同士なら気軽に質問できるが、知人がいない部署へ問い合わせするときには堅苦しい挨拶から始まる」といった声もありました。

そこでリスペクターズでは、「NTTデータ(グループ)の社員が個々の能力を最大限発揮し、さらには協業してオールNTTデータの総力を結集できるような、風通しのいい会社風土を創る」という目的を打ち立てました。この目的を実現するべく、「セクショナリズム打破」に向けた一歩を踏み出すための施策案の本格的な検討がスタートしました。

まず着手したのは、メンバー間での「セクショナリズム」の定義の共有でした。様々な議論の末、「セクショナリズムとは、事業本部や担当といった組織に起因するものだけでなく、スタッフ、営業、開発、R&Dといった所属部門や年次、性別、採用形態など社内に存在する多様な属性の相互不理解から生ずるやりにくさ」と定義し、次に示す「3つの壁」がセクショナリズムを生み出しているという仮説を立てました(図3-3参照)。

図3-3 セクショナリズムを生み出す3つの壁
 図3-3 セクショナリズムを生み出す3つの壁

(1)意識の壁
各社員が無意識に築いている壁。たまたま自分が所属する組織や仕事の狭い枠の中で発想してしまう。たとえ全体を見据えた考えや意見を持っていても、「それは自分の仕事ではないし」と組織や役割を超えてそれを表明しようとしない。また、「まあこんなものだろう」という自己満足、「自分ひとりではどうせ何も変わらない」といった諦めも、この意識の壁から生まれます。

(2)情報の壁
上述の意識の壁を越えて、組織や役割を超えたアクションを起こそうと考えた社員が次に遭遇する壁。「同じようなことを悩んでいる部署や社員がいるだろう」、「きっと自分が抱えている課題を解決できる人がいるはず」とは思っても、誰に聞けば良いのか分からない。どこに自分が必要とする情報やきっかけがあるか分からない。そして、そのままたどり着けないうちにタイムアップとなってしまうケースはこの壁です。

(3)制度の壁
意識の壁と情報の壁をクリアし、いよいよ組織や役割を越えて連携しようとした時に立ちはだかる最後の壁。協業すべき相手を見つけて部門間連携を申し入れたものの、組織間の利害や手続きの違いなどが原因で調整に手間取り、結果的に実現できない場合が該当します。

「制度の壁」の対策は社内手続きや管理会計など、経営にも関係してきます。そのため、リスペクターズでは以上の3つの壁のうち、まず自分たちができることから始めようと考え、「意識の壁」と「情報の壁」の2つを社員が越えやすくするための施策の立案に入りました。3番目の「制度の壁」は、前記の2つの壁を乗り越えてなお立ちはだかる時には、全社として経営と一体となって解決するべき課題と捉えました。

乗り越えるべき壁が見えたら、メインターゲットを絞り込みました。「社内に存在するセクショナリズムを問題と認識しているか」を縦軸に、「組織や役割を越えた動きができているか」を横軸にしたモデルを作成し、社員を大きく4つのグループに分類しました(図3-4参照)。

図3-4 セクショナリズムを超えるためのターゲット4象限
図3-4 セクショナリズムを超えるためのターゲット4象限

本連載は、2010年1月にリックテレコムから発行されたソリューションIT新書『NTTデータ流ソーシャルテクノロジー ~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~』(著者・Nexti運営メンバー有志)を転載したものです。

鈴木宏史(すずき・こうし)、豊島やよい(とよしま・やよい)

鈴木宏史
株式会社NTTデータ 第一公共システム事業本部
1999年、NTTデータ入社。入社以来、自治体系システムを担当分野として、営業及びシステム開発に従事する。Nextiには2006年2月より参画し、全体企画及びユーザー対応等を担当する。また、幹事長として合宿や忘年会等のイベントを仕切っている。

豊島やよい
株式会社NTTデータ 営業企画部
1998年、NTTデータ通信入社。SEとして官公庁向け電子申請システムの開発等を手がけた後、航空・空港業界の営業・マーケティング、新規ビジネスの立ち上げを経て、現部署に異動。全社営業力強化を目標に、前線の営業担当者向けの営業改革施策立案・運用に携わる。本書内の「新・行動改革WG」に参加。Nexti立ち上げメンバーとして、的場聡弘氏とともに「こころざし」を起草。また「3行の利用規定」の起案やユーザー対応など、技術力を共感力で補う立ち位置で活動している。

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