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養豚をIoT/AIでアップデート タンパク質危機を超えて、誰もが豚肉を楽しめる未来へ

文◎原田果林(編集部) 2021.08.16

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肉の需要が世界的に増え続け、供給が追いつかない─―。「タンパク質危機」が迫るなか、養豚業では生産性向上が喫緊の課題だ。2017年設立のスタートアップ、Eco-Porkはこれらの課題をIoT/AIで解決する。

 
「このままでは、テーブルミートとして日常的に食べられてきた豚肉が、食卓から消えてしまうかもしれない」。Eco-Pork共同創業者/取締役Porker事業統括責任者の荒深慎介氏は、会社設立の理由をこう話す。

危機感の背景にあるのは、次の2つの世界的潮流だ。まずは、迫りくる「タンパク質危機(プロテインクライシス)」。世界人口の増加と中間層の拡大によって、肉の需要が急増しており、将来的には食用豚肉の価格が40%高騰するという予測まである。需要の伸びに合わせて供給を増やせないのは、家畜の飼料となる穀物の増産が追い付かないからだ。

2つめの背景は、貿易自由化の進展である。1kgあたり最大482円だった豚肉への関税は、TPPやEPA、日米貿易協定の締結により年々引き下げられ、今後50円まで減少していく。

荒深氏によれば、日本の養豚業界の生産性は海外と比べて低い。母豚1頭あたりの年間子豚数は20頭と、北米の25頭より2割も劣る。飼料についても、豚が空腹でない時もベルトコンベアで常時運び、そのまま腐って廃棄している養豚農家が少なくない。さらに日本の養豚農家戸数は直近20年で半減。人材不足、従事者の高齢化、デジタル化の遅れなど、問題が山積している。

国産豚肉は希少で高価、輸入豚肉も高くて手が届かない─。こんな未来の現実味が増しているのだ。そうしたなか、Eco-Porkは「誰もが安心して豚肉を楽しむ未来をつくる」というミッションを掲げて2017年に創業した。取り組むのは、IoT/AIなどICTを用いた養豚の「自働化」だ。

 

Eco-Pork 共同創業者/取締役 Porker事業統括責任者 荒深慎介氏
Eco-Pork 共同創業者/取締役 Porker事業統括責任者 荒深慎介氏

 

養豚をDXでアップデート「自働化とは、勘・コツ・経験が必要な作業から熟練技術者を開放し、熟練技術者に改善や次世代につながる人材育成に専念してもらうこと。養豚業をDXによってアップデートしたい」と荒深氏は説明する。

Eco-Porkが最初に提供を開始したのは養豚経営管理システムの「Porker」だ。従来、養豚農家は、紙の野帳に母豚の飼育場所、分娩結果、哺乳中の子豚の状態などを手書きし、事務所に戻ってからエクセルに再入力していた。それがPorkerの「デジタル野帳」を使えば、タブレットでの一度の入力で済む。さらに、クラウドに蓄積されたデータをもとに、繁殖や出荷、経営の状態がダッシュボード上に可視化されるほか、改善策までリコメンドしてくれる。

 

図表1 自働化による養豚農家の発展産業化・持続可能化のイメージ

図表1 自働化による養豚農家の発展産業化・持続可能化のイメージ

 

顧客の声を受けて、最近こんな機能も追加した。「デジタルに不慣れなユーザーから、アイコンをタップする形式では入力しにくいとの声があった。そこでタブレット用のスタイラスペンを使って手書き入力できる機能を追加した」。この機能が好評で「キラーコンテンツになっている」と荒深氏は笑みを浮かべる。


Porkerは2018年のリリース以来順調に売上を伸ばしており、導入農家は2021年1月時点で58件に達している。
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