[5G思考#3]北大 野口教授 – 人間は「作業」から解放される

高齢化がとりわけ深刻な日本の農業。その救世主となりそうなのが、ロボット農機だ。無人運転により大幅な効率化が実現し、人間は作業から解放される。その未来に人間がなすべき仕事とは何か。

「5Gの低遅延を活かせば、1人で複数台のトラクターを同時に遠隔制御することが可能になる」

こう語るのは、北海道大学大学院農学研究院の野口伸教授だ。

北海道大学大学院 農学研究院 野口伸教授
北海道大学大学院 農学研究院 野口伸教授

野口教授が率いるビークルロボティクス研究室では、研究テーマの1つとして、無人トラクターや田植えロボット、ロボットコンバインなど車両系ロボット農機の開発に取り組んでいる。

ロボット農機が注目を集めている背景として、日本の農業が置かれている現状を把握しておく必要がある。

少子高齢化や都市部への人口流出により、農業就業人口は年々減り続けている。2019年は168万人と前年から7万人減少した。一方、平均年齢は就業人口に反比例するように上昇しており、2019年は67.0歳と高齢化が顕著となっている(農林水産省『農林業センサス』)。

就業人口の減少と高齢化がさらに進むと、日本の農業はどうなるのか。「耕作放棄地が増え、食の安全・安心や食料自給率にも影響を及ぼすだろう」と野口教授は警鐘を鳴らす。

すでに限られた担い手に農地が集約される「農業の大規模化」が進んでいる。農家1軒あたりの耕作面積が大きくなると、作業を効率化し生産性を高めなければ一定の生産量を維持することが難しくなる。そこでロボット農機への期待が高まっているのだ。

農水省は2017年3月、ロボット農機の自動走行技術の実用化に向けて「安全性確保ガイドライン」を策定した。

その中で、「使用者が搭乗した状態での自動化」をレベル1、「圃場内や圃場周辺からの監視下での無人状態の走行」をレベル2、「遠隔監視下での無人状態の自動走行」をレベル3と定義。現在はレベル2の段階にあり、有人トラクターが草刈りなどの作業をしながら、前方の無人トラクターの監視を行っている。レベル3については、2020年の実現を目標に掲げる。

月刊テレコミュニケーション2020年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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