センサーやネットワーク、デバイス、クラウド――。IoTを構成する要素は、多岐にわたっている。
それぞれ何を選べばいいのか、迷うのではないだろうか。
例えば温度センサー1つとっても、測定する温度が高温か低温か、データを収集する回数が多いか少ないか、精度の高いデータを求めるか否かなど、目的や条件によって適合するセンサーの種類は異なってくる。
また、ネットワークについても3G/LTE、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee、Sigfox、LoRaWANなど様々な通信規格が存在する。データを取得する場所や範囲、通信容量、頻度、電源条件などの条件から適した規格を選ぶ必要がある。
デバイスに関しては、「手頃なものがあるかどうかが一番の問題」と指摘するのは、ソフトバンク IoT&AI技術本部 IoT技術戦略統括部 統合推進部部長の朝倉淳子氏だ。
一例として、LPWAの規格の1つであるNB-IoTは、国内では商用サービスが始まってからまだ日が浅い。「NB-IoTを使ってトラッキングの仕組みを構築したい」と考えても、最適なデバイスを見つけるのは難しいのが現状だという。
図表 IoTを構成する要素
パッケージなら専門知識不要こうしたなか、センサーやデバイス、ネットワークはどう選べばいいのか。
「IoTで何かを始める際、センサーだけ、あるいはデバイスだけというのではなく、統合的にデザインすることが必要になる」とNTTコミュニケーションズ 経営企画部 IoT推進室 担当課長の金丸一誠氏は話す。それぞれの“相性”も考慮したうえで、最適な組み合わせを選ぶ必要があるからだ。
例えば、環境に存在する振動・光・熱などの微小なエネルギーを収穫して電力に変換するEnOcean。電池なしで通信できるため、定期的な電池交換が難しい山間部や僻地におけるIoT通信などに採用される機会が増えているが、Wi-FiやLoRaWANなどの規格と比べると、対応するIoTゲートウェイが限られている。EnOceanを軸に選定を進めてきたが、トータルに考えてみると、電池駆動型の通信規格の方が適していたといったケースもあるはずだ。
このようにIoTにおいては全体像を理解したうえで製品選定を進めていく必要がある。ただし、ネットワーク担当者はネットワークに関しては“プロ”だが、アプリケーションなどその他の部分については門外漢というケースが多い。逆もまた然りで、すべてに詳しい人材は圧倒的に不足している。そうした人材を育成しようとしても、もちろん一朝一夕にはいかない。
(左から)NTTコミュニケーションズ 経営企画部 IoT推進室 主査の谷川唯氏、同担当課長の金丸一誠氏
そこで1つの解となるのが、パッケージソリューションの活用だ。
センサーやデバイス、ネットワークなどがセットになったIoTソリューションは、ITベンダーなどから提供されている。
パッケージソリューションを利用するメリットの1つが、デバイスやセンサーの選定の手間が省かれることだ。すでにベンダーの検証済みのものがラインナップに選ばれているので、ユーザー企業は前出のような相性を考える必要がない。
例えばNTTコムは、IoTプラットフォームサービス「Things Cloud」上で、ビル内環境モニタリングや産業機器の稼働監視、店舗の冷蔵庫の温度管理など、課題別にIoTソリューションを提供している。「必要な機能がすべて揃っているので、専門知識を持たない事業部門の担当者でもすぐに使うことができる」と経営企画部 IoT推進室 主査の谷川唯氏は話す。