「実は、今お見せしている企業の10倍とは言わないが、さらにたくさんの企業から『こういう検証を一緒にやってみたい』といった引き合いや相談を頂いている。5Gへの期待感は我々の想像以上だ」
5Gを活用した新サービスの創出に向けて、様々な企業と連携した実証実験に力を入れているNTTドコモ。同社 先進技術研究所 5G推進室 5G方式研究グループ グループリーダ 主幹研究員の奥村幸彦氏はこう明かす。
今、ICT業界だけではなく、様々な業界の企業が、5Gの可能性を探ろうと具体的に動き始めている(図表1)。
図表1 モバイルキャリアがパートナー企業と協力して行う主な5G実証実験
5Gの商用サービスが日本でスタートするのは2020年の予定だ。サービス開始の3年も前から、ICT業界以外でも関心が高まっている背景としては、モバイルキャリアや総務省などの努力も大きい。だが、もちろんそれだけが理由ではない。
「今年はiPhoneが登場してちょうど10周年。この10年間の経験により、ICT業界以外の企業においても、モバイルネットワークの位置づけが変わったからだ」。こう説明するのは、日本の5G推進団体「5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)」のアプリケーション委員会委員長も務めるインフォシティ 代表取締役の岩浪剛太氏だ。
「iPhoneが世の中をひっくり返した。スマートフォンはユーザーの生活行動に深く浸透したため、今や『あらゆるビジネスがスマートフォン抜きでは考えられない』と言っていいぐらい、社会に対するモバイルネットワークの重みは一変している。4Gの時も私はアプリケーション委員会だったが、当時と今では、他産業の方々の“真剣味”がまったく違う」
5Gを土壌に、スマートフォンに匹敵するようなイノベーションが再び起こるかどうかは、まだ分からない。しかし少なくとも、5Gがさらにデジタル革命を加速させていくことは間違いない。