ゲリラ豪雨の被害を減少させるため、2015年に改正された水防法では、自治体が下水道施設の水位情報を地域住民等に知らせる「水位周知下水道制度」が創設された。雨水の流入によって下水道の氾濫が起こる前に、住民に対して避難や止水板の設置を呼びかけ、被害の減少につなげることが制度設置の目的だ。
自治体がこれに対応するには、下水道の水位をリアルタイムかつ高精度に観測するシステムが必要となる。このニーズにIoT技術で応えたのが富士通だ。「ICT企業として貢献できるのではないか」(富士通 イノベーティブIoT事業本部 インダストリアルIoT事業部の中川裕氏)と、センサーで下水道の水位をリアルタイムに監視して氾濫の兆候を検知するシステムを開発した。
富士通 イノベーティブIoT事業本部 インダストリアルIoT事業部 中川裕氏 |
開発を担った富士通研究所は2015年7月から福島県郡山市と、この「下水道氾濫検知ソリューション」の有効性を確認するための実証実験を開始。同市内の下水道管路の上流・中流・下流の3カ所に水位センサーを設置した。その結果、ゲリラ豪雨の発生から約15分後に上流の管路の水位が上昇し、30分後には下流の管路で満水に近い状態になったことを数値で捉えることに成功した。
また、同市内の幹線道路の下に配置された下水道では、2016年夏に発生したゲリラ豪雨の際、水位が急速に上昇し管路が満水状態に達したことを計測した(図表1)。これらの実証実験を通じて富士通研究所と郡山市は同ソリューションが氾濫の兆候を検知するのに有効と確認した。
図表1 郡山市の実証実験における下水道の水位変化 |