2016年2月18日・19日に開かれた「NTT R&Dフォーラム2016」で、NTTの次世代ネットワークコンセプト「NetroSphere(ネトロスフィア)構想」の実証環境デモが公開された。R&DフォーラムはNTTの研究開発の成果を紹介する場として、毎年NTT武蔵野研究開発センタで開かれている。
NTTが2015年2月に発表したNetroSphere構想は、通信ネットワークを構成している専用機器の機能を分解・素材化し、自由に組み合わせることで、必要な機能や容量を経済的に提供できるようにするという考え方に立つもの。NTTはこれに基づいて経済的で収益性を確保できる新たなネットワークを実現するとともに、パートナーの多様なニーズに応え、サービス共創を加速させることを目指している。
構想の実現に向けて、NTTでは(1)アクセスシステムアーキテクチャ「FASA(Flexible Access System Architecture)」、(2)ルーターなどに代えて転送機能を担う「MSF(マルチサービスファブリック)」、(3)NFVベースの新サーバーアーキテクチャ「MAGONIA(マゴニア)」、(4)統合コントロールを担う「オーケストレーター」などの技術開発が進められている。デモは、これらの実証環境としてNTT武蔵野研究所内に構築された「NetroSpherePIT」を用いて行われた。
今回のデモの目玉といえるのが、今年2月8日に発表された(1)のFASA。専用装置で構築されているアクセスネットワークに仮想化技術を導入し、コスト削減や光コラボレーションなどのパートナーから求められる多様なニーズに柔軟に対応できるようにするものだ。
現行の光アクセスでは新サービスを提供しようとした場合、ハードウェア交換のために数カ月、ケースによっては数年の時間が必要となることがある。FASAは、この課題の解消を狙っている。
アクセスネットワークでは、例えばGEPON(GPON)における暗号化や誤り訂正など、高い処理能力が必要なため、現状では仮想化が難しい機能も多い。そこでFASAでは、必要に応じて特定の処理を行う「外付けモジュール」を追加することで伝送容量などの要件を満たせるようにしている。
FASAを用いてLinux PC上で試作された光アクセスの局内装置(OLT)。機能の一部は外付けモジュールで実現している |
FASAで想定されているユースケースの1つに、5G携帯電話の無線アクセスネットワークへの適用がある。複数の基地局の信号処理を1カ所でまとめて行うC-RAN構成では、基地局(RHH)とセンター側の仮想化ベースバンドユニット(vBBU)との間をダークファイバーで結ぶ形がとられるが、信号処理の一部を基地局側で行うことでデータ量を抑えギガビットイーサネットなどの利用が可能になる。FASAを用いることで、こうしたvBBUの構成変更にも柔軟に対応できるのである。
FASAを用いて試作された無線アクセスネットワークのデモ。通常の光回線(L2接続)で小型の屋内基地局(RRH)を仮想化ベースバンド・ユニット(vBBU)に収容する |
NTTでは、パートナーがFASAを使ってサービス・機能を実現するためのインタフェース仕様(API)を策定し、順次公開していく計画だ(1回目は2016年5月頃の予定)。