柏の葉キャンパスの挑戦――スマートシティを日本から世界へ

千葉県柏市にある柏の葉キャンパス駅前にクラウドとM2Mを技術基盤とするスマートシティが誕生し、今も進化を遂げている。その仕組みと、海外展開を視野に入れた今後の展望をレポートする。

東京・秋葉原からつくばエクスプレスに乗って約30分。柏の葉キャンパス駅に近づくと、いくつものビルが視野に入ってくる。柏の葉キャンパスに建てられている高層マンションや商業施設、ホテル、東京大学、千葉大学などの建物だ。

この地では今も新たな建物の建設が進むと同時に、スマートシティの取り組みが進行している。

まず、柏の葉キャンパス誕生の経緯と目指す方向性についてデッサンしておこう。柏の葉キャンパスエリアの面積は約273ヘクタール(約273万平方メートル)。三井不動産がかつて所有していたゴルフ場の跡地がそこに含まれる。同社は2005年のつくばエクスプレス開業と同時に柏の葉駅前にショッピングセンター「ららぽーと柏の葉」を開設した。

スマートシティの実現へと舵を切る契機となったのは、2008年に千葉県と柏市、東京大学、千葉大学がボトムアップ型で練り上げた「柏の葉キャンパスタウン構想」だ。三井不動産や柏市商工会議所など民間企業も加わり、その構想を推進する組織として柏の葉アーバンデザインセンターを設置した。

三井不動産柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部事業グループ主事の橋本隆仁氏は「トップダウン型でなくボトムアップ型で構想を策定したことが、この街に大きな影響を与えた」と話す。構想を形にする過程で、公民学が連携しながらそれぞれのミッションを果たす枠組みが確立した。

三井不動産 橋本隆仁氏
三井不動産 柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部 事業グループ 主事 橋本隆仁氏

スマートシティの大きなテーマは、エネルギーの効率利用を図り、ひいてはCO2を削減することだ。柏の葉では、2030年にCO2を35%(2000年比)削減することを目標として掲げている。

その出発点は省エネを推進すること。家庭ならHEMS(Home Energy Management System:ホームエネルギー管理システム)を、オフィスや商業施設ならBEMS(Building Energy Management System:ビルエネルギー管理システム)を導入して、エネルギーの使用量を可視化することがその具体策となる。

家庭やビルの省エネに加えて、地域全体で電力を融通するAEMS(Area Energy Management System:エリアエネルギー管理システム)を実現することも重要な課題だ。

柏の葉ではすでにHEMSの利用が実現し、BEMSの実用化も迫っている。柏の葉はスマートグリッドへと至る道を切り開いている。

図表 柏の葉スマートシティの概要
柏の葉スマートシティの概要

月刊テレコミュニケーション2013年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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