企業が持続的に成長していくためには、消費者のCX(Customer Experience:顧客体験)の質をいかにして高めていくかが重要だ。
細分化・多様化するニーズを的確に捉え、顧客の期待を上回る体験を提供することが、企業が消費者に選ばれるための条件となる。その実現の前には、人手不足や膨大なデータの管理といった壁が立ちはだかるが、これらの課題を解決してCX向上に貢献するのがZoomが提供するCXソリューションだ。
ビデオ会議ツールの代名詞として定着したZoomはその機能を拡張しながら、AI時代の顧客接点を担うCXプラットフォームとして進化し続けている。クラウドPBX「Zoom Phone」や、コンタクトセンター向け機能を提供する「Zoom Contact Center」が、その中核をなす。
テクノロジーの革新は加速している。なかでも注目されるのが「デジタルツイン」だ。オペレーター本人そっくりの外見と声をAIで再現し、多言語で会話できる機能のベータ版が開発されており、まもなく製品版への搭載が見込まれている。
ZoomのCXプラットフォームがもたらすのは、CX向上に留まらない。EX(Employee Experience:従業員体験)にも貢献する。2025年4月に開催されたリアルイベント「Zoom CX Summit Tokyo」には、こうした取り組みを先導する企業が登壇し、多くの聴衆の前でその成功要因を語った。
KDDIの「次世代リモート接客プラットフォーム」
その1社がKDDIだ。KDDI パーソナル事業本部マーケティング本部 本部長の手塚嘉一郎氏は、日本が直面している様々な社会課題の解決に、同社が「つなぐチカラ」で取り組んでいることを紹介。そのためのカギの1つとして掲げたのが「次世代リモート接客プラットフォーム」だ。
KDDI パーソナル事業本部マーケティング本部 本部長の手塚嘉一郎氏
このプラットフォームは、地理的・人的制約に左右されず、いつでもどこでも高品質な接客を提供することを目指して開発が進められている。
コロナ禍を契機に、顧客との接点はオムニチャネル化が加速した。すでに一部のコンビニやau Style/ショップでは、リモート接客によって通信関連サービスの手続きやヘルスケア・金融などのサービスに対応している。また、auオンラインショップではアバターを活用した手続きのサポートを行っており、従来の手法と比較し高い成約率を記録しているという。移動型店舗の「au SHOP CAR」は実店舗へのアクセスが難しい地域に出張し、リモート接客により実店舗同等のサービスを提供している。
このように、顧客接点の多様化、拡大を推進する一方で、課題も浮き彫りになったという。KDDIの調査では、リモート接客利用者の4人に1人が「通信の不安定さ」や「会話のしづらさ」に不満を持っており、リモート接客に対する不安感の原因になっていた。
こうした課題を解決し、リアルとオンラインがシームレスに連携した接客を提供するための基盤が、次世代リモート接客プラットフォームだ。KDDIはその中核に優れたUI/UXを持つZoomのコミュニケーションツールを採用。KDDIの通信インフラ技術と掛け合わせ、安定した通信と良好な音声・映像を提供し、安心してリモート接客を利用できる環境を実現する。手塚氏は「お客様の満足度は確実に上げられると確信しています」と自信を見せた。
次世代リモート接客プラットフォームでは、高品質なコミュニケーションツールであるZoomと、進化したAVITA社のアバター接客技術を組み合わせ、AIと有人のハイブリッド型のリモート接客を提供する。加えて、KDDIの幅広い個人向けサービスやAIによるパーソナライズ技術も連携させ、顧客の多様なニーズに一元的に応えるという。
手塚氏は、「コミュニケーションプラットフォームに関する高い技術力と豊富なノウハウを持つZoomとの心強いパートナーシップによって、どこよりも高品質で信頼性の高い接客体験を提供できます」と、Zoomに厚い信頼を置いていることをアピールした。
次世代リモート接客プラットフォームは、コンビニ、au Style/ショップ、オンラインショップといったチャネルで順次活用を進めていく計画だ。KDDIは「Life Transformation」というスローガンのもと、通信基盤とAI・データ基盤を活用し顧客接点を強化する戦略を掲げている。手塚氏は「次世代リモート接客プラットフォームは“つなぐチカラ”をより強くするアセットです」と話し、Zoomとの緊密な連携により、CX変革をより一層推し進めていく姿勢を示した。
さくらインターネットはZoom PhoneでCXとEXを同時に向上
ZoomのCXソリューションの導入によって、CXとEXの双方の向上を実現したのが、さくらインターネットだ。同社は自社運営のデータセンターを基盤に、法人・個人向けにサーバーホスティングやクラウドサービス、高性能GPUサーバーなど、幅広いIT基盤サービスを提供している。
カスタマーサポートにおいて通話品質は顧客満足に直結する。さくらインターネットはZoom Phoneを導入することで、応対品質と従業員の働き方の両面を改善することに成功した。顧客対応をより迅速かつ正確に行えるようになったことに加え、現在も実施率が約9割に上るリモートワーク体制の継続を支えている。
Zoom Phoneを導入した背景には、従来利用していたオンプレミス型IP電話システムに起因する課題があった。一定の機能は備えていたものの、定期的な機器リプレースに伴うコスト負担や、障害発生時の原因切り分けに時間を要すること、さらには定期メンテナンス時に電話窓口を一時閉鎖せざるを得ないといった運用上の制約が存在していた。
加えて、コロナ禍によるリモートワーク拡大により、様々な環境下での安定した通話品質の確保が新たな要件として浮上した。
Zoom Phoneは、インターネット回線を利用して内線・外線通話が可能なうえ、Zoomの自社回線による定額制発信プランも提供する。無制限・無期限の通話録音や、ボイスメール、通話ログの取得、モバイル端末との連携といった機能のほか、コールキュー、モニタリングなどの基本的なコンタクトセンター向け機能も搭載する。Zoom MeetingsやZoom Team Chatと同一プラットフォーム上でシームレスに連携できることも長所であり、従来のビジネスフォンを大きく進化させるソリューションとして注目されている。
Zoom Phone導入を主導したさくらインターネット クラウド事業本部カスタマーリライアビリティ部 部長の大西圭一氏は、その決め手として第一にシンプルなユーザーインターフェースを挙げた。同社ではすでにZoom Meetingsを活用しており、共通した操作性を持つZoom Phoneは現場の導入ハードルを大きく下げた。
さくらインターネット クラウド事業本部カスタマーリライアビリティ部 部長の大西圭一氏
そして、通話ログの取得や録音といった現場の業務に直結する機能が豊富に揃っていたことも重要だったという。さらに導入から運用開始までのスピード感と、定額制によるコストの明確さも選定理由となった。大西氏は「電話をかける業務が一定量ある中で、コストが安定していることは大きなメリットです」と語った。
さて、Zoom Phoneの導入がもたらした効果を紐解こう。大西氏は、CX向上のポイントを3つ紹介した。
まず、通話品質の改善だ。安定した音声品質と遅延の最小化は、顧客に対してより快適なコミュニケーション体験の提供を可能にした。「問い合わせをされるお客様は最初からストレスを抱えています。高い通話品質によって、お客様の不満を抑止することができます」
次に、より正確な顧客対応がある。録音機能の活用により、トラブル発生時の事後対応が迅速化されたほか、通話データの分析によって応対品質の向上に向けた教育・研修が効果的に行えるようになった。
最後に、スピードと柔軟性だ。Zoom PhoneはPCやスマートフォンからも利用できるため、従業員は場所を問わず応対可能となった。これにより、顧客からの問い合わせに対する初動対応のスピードが向上し、待ち時間の短縮にもつながった。
EXの面でも顕著な効果があった。従来のオンプレミス型IP電話では各自の通信環境に音声通話の品質が大きく左右されていた。通信品質の問題から出社を余儀なくされるケースもあったというが、Zoom Phone導入によりこうした事態は解決。「働き方の多様化が大きく前進しました」(大西氏)。
通話ログの可視化も、運用効率を飛躍的に向上させた。応対品質に課題のある通話を特定し、問題点を明らかにし改善に役立てる取り組みが容易になったという。「以前のツールでは問題発生時の原因特定に手間取っていましたが、Zoom Phoneの導入によって大幅に改善しました」と大西氏は評価した。
同社では今後、AIも駆使してZoom Phone運用の継続的な改善を図る方針だが、大西氏は「メンバーに寄り添った改善が必要です」と強調した。同社ではカスタマーサポート部門に導入後、データセンター部門にもZoom Phoneを広げたが、各部門での導入にあたっては現場目線での検証を繰り返し、フィードバックを重ねたという。「メンバーに寄り添って、CXとEXのバランスを重視した改善を続けていきます」と大西氏は力を込めた。
Zoom CX Summit Tokyoのキーノート、
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<お問い合わせ先>
ZVC JAPAN株式会社(Zoom)
マーケティング部
E-mail:japan-marketing@zoom.us
URL:https://explore.zoom.us/ja/contactsales/