東京大学 関谷勇司教授「AI専用網の可能性はある。セキュリティDXで人をサポート」

AI時代、ネットワークとセキュリティは、どう発展していくべきなのか──。東京大学 関谷勇司教授が注目するのは、やはりデータセンターネットワークだが、さらに「通常のインターネットとは異なる、AIの推論のためだけのデータネットワーク」の可能性も示唆する。また、従来の「人に責任を全部押し付ける」セキュリティから人をAIがサポートする「セキュリティDX」への進化が重要だという。

東京大学 大学院情報理工学系研究科 情報セキュリティ教育研究センター 教授 関谷勇司氏

東京大学 大学院情報理工学系研究科 情報セキュリティ教育研究センター 教授 関谷勇司氏

──AIが社会を大きく変革しつつあるなか、ネットワークは今後どう発展していくべきとお考えですか。

関谷 AIのために必要な計算リソースやデータは、さらに増加していくことになると思います。ですから、データセンターの個々のサーバー1台1台を連携して、AI用の処理を行うためのネットワークは、ますます広帯域かつロスレスなものへと発展していく必要があるでしょう。

AIの学習においては、GPUでの処理が非常に重要です。一方、CPUは、GPUにジョブを割り当てるスケジューラーとしての役割くらいしかありません。エヌビディアがNVLinkというGPU同士を高速・低遅延でインターリンクするための技術を提供していますが、このようにGPU同士のインターリンクの中にほとんどの通信が収まるようになると、データセンターの構造自体も変わっていくと注目しています。

通常のCPU、普通のコンピューターのためのデータリンクとは作り方が違ってくるわけで、GPU用と普通のコンピューター用の2面のデータリンクが必要になってくるということが当然あると考えています。

──AI用の計算リソースの効率利用を図っていくうえで、データセンターネットワークの広帯域化やロスレス化がますます重要なカギの1つとなっていくわけですね。データセンター以外のネットワークについてはどうでしょうか。

関谷 普通のデータ通信、いわゆるインターネットがAIの挙動、計算、推論に対して貢献できることは、現時点ではそれほど多くないと思っています。

もちろんAIによってデータ量が増加していけば、より一層、効率的にデータを転送する必要性は増していきます。しかし、基本的には今まで通り、広帯域かつ低遅延なネットワークをいかに提供していくか、ということになるでしょう。

逆に、AIがネットワークに貢献できることはたくさんあります。例えば、光波長の割当をAIで効率的に行う研究だったり、AIによる障害の予兆検知だったり、ネットワークのオペレーションにAIを活用する研究は非常に活発です。

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関谷勇司(せきや・ゆうじ)氏

1997年、京都大学総合人間学部卒。2005年、慶應義塾大学 政策・メディア研究科 後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。1999年に米USC/ISI(南カリフォルニア大学 情報科学研究所)にてDNSの研究に従事。2019年より東京大学 大学院情報理工学系研究科 情報セキュリティ教育研究センター 教授。次世代ネットワークプロトコルの研究開発とソフトウェアネットワーキング技術、およびサイバーセキュリティに関する研究に従事。デジタル庁 シニアネットワークエンジニアを兼務

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