自動運転プラットフォームや新薬の開発、デジタルツインによる生産現場の効率化など、産業界のさまざまな分野でAI(人口知能)活用が進んでいる。生成AIの普及により、その活用領域は飛躍的に拡大していくとみられる。
旺盛なAI需要を支える基盤として、世界中でAIデータセンターの整備が進められている。
AIデータセンターには、高度なデータ処理能力を持つGPUサーバーが数十台から、大規模な施設では数千台も設置され、多数のGPUの並列処理によって、AIの学習フェーズに必要な膨大なデータ処理への対応を可能にしている。
日本でもデータ消費地でもある大都市圏を中心にAIデータセンターの整備が進められている。だが、立地の確保や電力供給の制約などから大規模な施設を建設するのは難しくなってきた。
分散型AIデータセンターが解決策に 鍵は「超高速・ロスレス」なDCI
この問題の解決策として注目度が高まってきたのが、大容量DCI(データセンター相互接続)を活用した分散型AIデータセンターの整備だ。離れた場所にある複数拠点を大容量の光回線で接続し、一体的に運用することで、GPUサーバーの効率的な利用や電力消費の低減などを可能にしようというのだ。
この分散型AIデータセンターで用いられるDCIには厳しい要件が求められる。AIのトレーニングを行うGPUクラスターでは、GPUサーバー間の接続には400Gbpsといった超高速通信に対応できるInfiniBandや高速イーサネットが用いられている。近い将来、800Gbpsや1.6Tbpsに高速化されよう。また、GPUの並列処理を効率的に行うためにはロスレス、低遅延といった要件も不可欠だ。
分散型AIデータセンターでは、こうした高速・ロスレス・低遅延通信をDCIで実現する必要がでてくる。
もう1つ、分散型AIデータセンターのDCIに求められるのが拡張性だ。AIの利用拡大によりデータセンターのトラフィックは指数関数的に増加すると見られる。コストを抑えてネットワークを大容量化する必要がある。
日本では分散型AIデータセンターを実現する通信技術として、IOWN APNを用いた実証実験が行なわれているが、海外では「ダークファイバーなどを利用した自営DWDMを用いて分散型データセンターを実運用する企業が出てきている」と、アイランドシックス Pre-Sales マネージャーの山口闘志氏は話す。
(左から)アイランドシックス 取締役の芝川晃一氏、通信インフラ事業部 セールスマネージャーの吉村高幸氏、Pre-Sales マネージャーの山口闘志氏
アイランドシックスでは、この新たなニーズに応えるため、分散型データセンターの構築で実績を持つPacketLight(イスラエル)のDCIソリューションの展開に力を入れている。図表に示したのは、その導入事例の1つ。海外の自動車メーカーが自動運転プラットフォーム開発で利用している2つのAIデータセンターをPacketLightのDCIソリューションを用いて接続している。
図表 PacketLightのDWDM製品によるエンタープライズDCIの構成例