我々は6年前に、この旅を始めた――。
「AI-RAN」の実現を目指すソフトバンクとの歩みをこう振り返るのは、エヌビディアでテレコム分野のバイスプレジデントを務めるソーマ・ヴェラユサム(Soma Velayutham)氏だ。
エヌビディア テレコム分野バイスプレジデントのソーマ・ヴェラユサム(Soma Velayutham)氏
AI-RANの目的は、RAN(無線アクセスネットワーク)とAIのワークロードを単一のプラットフォーム上に統合して処理の効率を最大化することだ。下図のように、GPUサーバーをベースに構築するプラットフォーム上でRANとAIのワークロードを稼働させる。AIを駆使してRAN処理を高度化すると同時に、これまでは無線処理のみのためにネットワークエッジに配備してきたRAN設備を、エッジAIサービスの提供も兼ねる新プラットフォームへと変貌させる。
RANとAIのワークロードを単一プラットフォームに統合する
このコンセプトに賛同する“仲間”が、世界中で急増している。
2024年2月にARMやエリクソン、ノキア、サムスン、T-Mobile USAらと設立した「AI-RAN Alliance」のメンバーは、「わずか10カ月後の現在は49社に達しており、さらに拡大を続けている」(同氏)。
RANは「コストセンターからプロフィットセンターに」
エコシステムが拡大している理由は、AI-RANが通信業界にもたらすインパクトが途方もなく大きいからだ。
メリットの1つは、RANの高度化・効率化によって5G通信の品質向上やコスト最適化が見込めること。加えて、この新インフラとエッジAIを活用すれば、通信事業者はAIビジネスによる収益増への道を拓くことができる。ソフトバンク執行役員 先端技術研究所 所長の湧川隆次氏は、「これまでコストセンターだったRANが、AI-RANによってプロフィットセンターへと変容する」と、その効果を強調する。
ソフトバンク執行役員 先端技術研究所 所長の湧川隆次氏(左)と、
同研究所 先端無線統括部 基盤&AI室 室長の山科瞬氏
ヴェラユサム氏が「通信業界における新たなルネッサンス」と表現するこの変革は、どのように実現されるのか。先ごろ行われたAI-RANの実証を基に解説しよう。