NTTとNECは2024年11月12日、IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)の適用エリア拡大に向けて必要となる波長アダプタ機能を有した光ノードシステムを開発し、同システムが複数回の波長変換を行いながら長距離伝送可能であることを実証したと発表した。
IOWN APNにおいては、大容量・低遅延なエンドツーエンド光パス(光信号の送信機から受信機までをつなぐ光信号の通り道)を、消費電力を抑えつつユーザーに提供している。両社は、より広範囲にエンドツーエンド光パスを提供するため、2つの技術を開発した。
1つめは、APNを構成する光ノードシステム「Photonic Exchange」だ。接続先の未使用な波長に合わせて波長を適用させる「波長アダプタ機能」を具備している点が大きな特徴だ。また、適用する波長変換方式の物理現象を踏まえて信号品質を推定し、波長変換による信号影響を抑制した光ノードシステム構成を設計した 。これにより、エリアごとの使用されていない波長を有効活用した長距離のエンドツーエンド光パスの提供に貢献できるという。
Photonic Exchangeの波長アダプタ機能による、エリアごとの未使用な波長を使用したエンドツーエンド光パス提供の概要図
2つめは、光パスの波長を任意の波長に変換する「OAO型波長変換器」だ。OAO型波長変換器は、光信号から電気アナログ信号への変換に留め、電気デジタル信号へ変換することなく波長を変換することが可能だ。これまでデジタル信号処理で生じていた遅延や揺らぎをなくせることから、低遅延かつノージッタなエンドツーエンド光パスの特徴を損なわずに光パスの波長を変更することができるとのこと。
波長アダプタ機能を実現するための要素技術
両社は、このOAO型波長変換器のプロトタイプを使用して、1周回あたり2個のOAO型波長変換器を含む周回伝送実験系を構築。この実験系を使用して、複数回の波長変換を伴う100Gbps/λの光信号品質を測定した。その結果、4回の波長変換を施しても3000km以上の伝送性能の確保ができたことを確認できたという。
さらに、同実験で使用したOAO型波長変換器では、従来の波長変換手法と比較して、波長変換により生じる消費電力を約90%、遅延量を約99%削減。同実験で確認できた伝送距離は、本州を縦断できる距離に相当するという。これにより、工場DXやインタラクティブなライブ映像配信サービス、遠隔手術等のIOWNサービス提供エリアの拡大に寄与するとしている。また、同実験で複数回の波長変換を確認できたことから、異なる事業者が管理するネットワークをまたがったエンドツーエンド光パスの実現にも貢献できるという。
波長アダプタ機能を適用したエンドツーエンド光パスの伝送性能を評価するための実験系