IoTデータの収集にはコネクティビティが必須要件であるため、「IoT×AI」の適用先はこれまで、どうしても人の生活圏に偏っていた。
だが、今後は違う。空から電波を降らせるNTN(Non-TerrestrialNetwork:非地上系ネットワーク)の力を借り、海でも山でも地球上どこでもIoT×AIを活用して経済・社会活動を高度化できるようになるからだ。
5Gの標準仕様を定める3GPPも、IoT向けNTNに取り組む。衛星とIoT端末間での直接通信を実現する「IoT NTN」だ。2022年半ばに標準化が完了したRelease 17(Rel.17)で仕様化され、Rel.17に準拠したスマートフォンや、IoT向けの低消費電力・低速通信規格であるNB-IoTおよびeMTC端末に、衛星から通信サービスを提供できる。地上系ネットワークとの連携によって、地球上のあらゆる場所からデータを収集可能になるのだ。
現在、世界中の通信事業者がRel.17の実装を進めており、衛星事業者もこの新規格に注目している。
IoT NTNを使ったサービス提供で先行するのが、以前から静止衛星(GEO)を使ってIoT向けの衛星ナローバンド通信サービスを提供していた米Skylo Technologiesだ。
米ベライゾンと提携し、今秋からRel.17準拠のスマートフォン向けに緊急通報用メッセージングサービスを提供する。IoTデバイス向けには、ソラコムと7月に新サービスを開始した。Skyloが提供するNB-IoTを用いたIoT向け衛星通信ネットワークをIoTプラットフォームのSORACOMに統合(図表1)。Rel.17準拠のデバイスであれば、地上系とNTNのいずれでも通信できる。