生成AIを業務で使いやすくする技術などが紹介された
台湾のクラウドコンピューティング業界が日本で開催している交流イベント「Cloud Computing Day Tokyo」が2024年11月5日、都内で開かれた。
このイベントは、台湾クラウドコンピューティング&IoT産業協会(CIAT)がオープンコンピュートプロジェクトジャパン(OCPJ)と、2013年から実施しているもの。11回目となる今回のテーマは「Generation AI & Energy Efficiency Network(生成AIとエネルギー効率のよいネットワーク)」だ。
プレゼンテーションでは、AI活用をサポートする様々な製品・技術のほか、生成AIの急速な普及により急増するデータセンターの消費電力を抑えるための手だてが取り上げられた。
AIを使いやすくする2つの技術・サービス
メインテーマの1つであるAIに関して、特に興味深かったものに、台湾企業が推進するAIを使いやすくするソリューションがある。
CIAT事務局長(国立清華大学教授、デルタ研究所所長)のTzi-Cker Chiueh氏が基調講演で紹介したのが、小売店や工場など多方面で利用が広がっているリアルタイム映像分析を大幅に効率化するミドルウェア「DIVA」だ。
リアルタイム映像分析に用いられる深層ニューラルネットワーク(DNN)推論は、非常に高い能力を持つものの、多くのコンピューティングリソースを消費する。DIVAはビデオシークエンスのフレームの一貫性を利用してDNN推論の呼び出しを回避する技術だ。DNNの利用頻度を抑えつつ同等の処理能力を実現できるため、エッジでのリアルタイム映像分析に用いるハードウェアのコストを大幅に削減でき、AIアプリケーションをより広い分野で活用できるようになるという。
CIAT事務局長のTzi-Cker Chiueh氏
続いて行われた台湾の大手SIer、SYSCOMのセッションでは、人の意図を分析し、質問をLLM(大規模言語モデル)から適切な回答が得られやすい形へ処理した上でLLMへ受け渡す「NeuroChain」が紹介された。
NeuroChainは、いわゆるRAG(検索拡張生成)の技術で、LLMに会社独自の知識ベースを埋め込んで業務に活用できるようになる。
SYSCOMでは、NeuroChainをRPAと組み合わせ、企業の様々な業務を処理するソリューション「コンピューター社員」を製品化した。自治体が書類廃棄の可否の判断や法令検索を効率化できるシステムなどを開発しているという。また、NeuroChainを日本で提供するソフトウェア開発会社CIJ(横浜市)では、同社が開発した自律移動型サービスロボット「AYUDA」へのNeuroChainの実装を計画中とのことだ。
会場で取材に応じたCIAT副理事長のJames Liu氏(SYSCOMグループCEO)は、現在の生成AIは、OpenAIが提唱する5つの発展レベルの第3段階「エージェント」まで到達しているとしたうえで、「企業が生成AIを導入する目的は生産性の向上とコスト削減。今すぐAIで何でもできるわけではないが、適した分野から段階的に活用を進めていくことが重要だ」と強調した。
CIAT副理事長のJames Liu氏
AIの業務活用には、大容量の自営無線システムも重要な役割を担う。
オープンソースの5Gコアソフトウェア「Free 5GC」を商用展開する台湾・Saviah社のセッションでは、「AIでリアルタイムに映像解析するためには、高精細映像を低遅延で伝送できるネットワークが必要だが、台湾の工場で導入が進むローカル/プライベート5Gはその有力な選択肢だ」とした。
James Liu氏によるとCIATでは、NTT東日本が行っているローカル5Gの相互接続検証への台湾メーカーの参加を推進、1km超の広域をカバーできる長距離無線LAN(Wi-Fi HaLow)でもAHPC(802.11ah推進協議会)と連携するなど、日本と協力して大容量自営無線システムの普及活動を進めているという。