富士通がIOWN APNで挑むデバイス開発 分散データセンターを「光NIC」で接続

APN IOWN 1.0サービスの最大の価値は“遅延の制御”にある。そのキーデバイス「OTN Anywhere」を開発・提供するのが富士通だ。同社はこの先、APNで何を実現しようとしているのか。

富士通が光伝送市場でシェアを伸ばしている。英調査会社Omdiaによると、特に北米でシェアを拡大。2020年の6.2%(5位)から2022年には15.5%(3位)と躍進した。世界シェアも3.6%から5.9%に伸びている。

日本では、通信事業者各社が進めるオール光ネットワークの構築支援で存在感を高めている。注目されるのが、NTTのIOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)関連技術を活用した新サービス開発だ。富士通 システムプラットフォームビジネスグループ ネットワークビジネスフロント本部 アカウントSE統括部 統括部長の杉山晃氏は次のように話す。

富士通 システムプラットフォームビジネスグループ ネットワークビジネスフロント本部 アカウントSE 統括部 統括部長の杉山晃氏

富士通 システムプラットフォームビジネスグループ ネットワークビジネスフロント本部 アカウントSE統括部 統括部長 杉山晃氏

「APN IOWN 1.0で確定遅延を実現しているデバイスが、遅延制御技術を搭載した『OTN Anywhere』だ。(富士通が今年販売を開始した光伝送装置の)1FINITY T250では、その確定遅延を応用した無瞬断サービスも可能になる」

IOWNの商用サービス第1弾がスタートして1年半。富士通はすでに、次を見据えた製品を市場投入している。

遅延制御装置をOEM提供

IOWN APNの最大の特徴は「遅延を制御できる」点にある。

通信遅延は通常、トラフィック量などによって変動する。このゆらぎをゼロに、つまり遅延を定量化できれば、拠点/端末間で時刻同期が不可欠なアプリケーションにとって非常に使いやすい通信サービスができる。

APN IOWN 1.0でこれを可能にしているのが、APNの末端に設置されるOTN Anywhereだ。この装置間で設定される通信パス(ODUパス)の遅延を測定し、調整する機能を備えている。

遅延の定量化によって生まれる価値はいくつかある。1つが「公平性」だ。

例えば、大阪市内のサーバーにアクセスしてサービスを利用する場合、大阪の人よりも、距離が遠い東京や福岡の人は遅れる。わずかな時間差が結果を左右する金融・証券取引やe-Sports、人気チケットの購入予約も距離が近い大阪が絶対的に有利だ。東京・福岡の人は負ける確率が高い。

だが、遅延が定量化できれば、この不公平は解消される。APN IOWN 1.0では、まずこの公平性が実現された。

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