東京都は昨年度より、5G/Beyond 5Gなどの次世代通信技術を活用した新たなビジネスやイノベーションを創出し、都民のQOL(Quality of Life)向上に寄与する製品・サービスの開発に取り組むスタートアップを支援する「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」を実施している。
同事業では、支援するスタートアップの選定や製品開発のサポートを行う「開発プロモーター」が中軸を担う。開発プロモーターには、3ヵ年のスタートアップの支援において、自らが設定したKPI(重要業績評価指標)の達成状況および事業成果の評価に応じ、初年度最大8千万円、次年度以降最大1億1千万円の協定金が支援される。
この開発プロモーターに昨年度より採択されているのが、電気通信大学の技術移転機関(TLO)であるキャンパスクリエイトだ。「スタートアップが実施する実証実験に必要な機器の手配やパートナー企業・自治体・大学との連携、サービスのPRなど、産学官の橋渡しやアクセラレーションの役割を担っています」と同社 専務取締役 オープンイノベーション推進部 プロデューサーの須藤慎氏は説明する。
(左から)avatarin ソーシャルソリューション部 マネージャー 島村潤氏、同部 部長 筒雅博氏、キャンパスクリエイト 専務取締役 オープンイノベーション推進部 プロデューサー 須藤慎氏
キャンパスクリエイトは、同事業で現在5社のスタートアップを支援しているが、そのうちの1社がavatarin(アバターイン)である。同社はANAホールディングス発のスタートアップで、今年7月に実施したシリーズBラウンドでは、ソフトバンクやみずほ銀行などの6社から約37億円の資金調達を完了させた。
遠隔操作ロボットが家電量販店や駅構内で活躍
avatarinの代表的な製品の1つが、遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」だ。機械に不慣れな人でも、スマホやPC等で簡単に操作可能だという。ロボットの上部には約10インチのディスプレイが搭載されており、遠隔操縦者の顔を映し出すことができるため、顧客の安心感醸成にもつながる。
遠隔操作ロボット「newme」
newmeの利用に特化したプライベートクラウドや専用プロトコルも独自開発し、「操作者とお客様のリアルタイムコミュニケーションに加え、ハイセキュリティも実現させています」とavaratin ソーシャルソリューション部/連携研究部 部長の筒雅博氏はアピールする。デコレーションパーツを付け替えれば、ロボットの高さや色を変更することも可能だ。
newmeの用途は多岐にわたるが、その主戦場は接客業である。家電小売大手のヤマダHDは今年5月、avatarinと業務提携を締結。全国の家電量販店にnewmeを導入し、人手不足の解消や業務効率化に取り組んでいくという。JR東日本は、newmeを活用した駅構内での案内業務に関する実証実験を今年2月に行った。newmeが駅員に代わって指定席券売機へ誘導し、きっぷの購入方法などを案内した。