日本ヒューレット・パッカードは2011年7月26日、同社のネットワーク事業戦略と新製品に関する記者説明会を開いた。3Com社の買収によりHPは、今や企業ネットワーク分野においてシスコに次ぐ立場を得ることとなったが、とはいえシスコの背中はまだはるか先にある。いかにしてシスコの牙城を崩していくのかが注目されるが、一体どのような戦略を発表したのか。
冒頭、挨拶に立ったのは、“元シスコ”の大木聡HPネットワーク事業本部長だ。シスコの企業ネットワーク関連プロダクトのシニアマネージャだった大木氏は報道陣にはお馴染みの人物であるが、12年間勤めたシスコを退社し、今年5月に日本HPに入社した。
大木氏はその理由について「HPのポートフォリオは非常に広範なもの。サーバー、ストレージ、ネットワーク、webOSを搭載したデバイスまで、クラウド時代の企業ICTインフラに必要なソリューションポートフォリオをこれだけ幅広く揃えている会社はHPを除いて存在しておらず、ネットワークにおいても新しい基軸を打ち立てられるのではないかと考えた」と語ったが、HPは人材面でもシスコ追撃の体制を着々と築いていると言えそうだ。
脱シングルベンダーでTCOは15~25%削減
HPの新ネットワークアーキテクチャ「HP FlexNetworkアーキテクチャ」を中心に、同社のネットワーク事業戦略を説明したのは、米HPのバイスプレジデントであるマイク・バニック氏だ。ちなみに同氏は“元ジュニパー”で、昨年8月にHPに入社した。
米ヒューレット・パッカード バイスプレジデント グローバルマーケティング ネットワーキング担当 マイク・バニック氏 |
バニック氏が最初に訴えたのはレガシーネットワークの変革の必要性だ。ビデオなどリッチコンテンツによるコラボレーションの重要性が増しているが十分な容量がないこと、サイロ型のため管理が複雑なことなど、現在の企業ネットワークの課題を指摘。そのうえで「HPはネットワークのルールを変革する」とし、HP FlexNetworkについて「ネットワーク全体を統合的にカバーできる唯一のアーキテクチャだ。コンペティターは、データセンター向けに1つ、キャンパス向けに1つと、それぞれにまったく別のアーキテクチャを標榜している」と語った。
レガシーネットワークアーキテクチャの問題点 |
FlexNetworkはデータセンター向けの「FlexFabric」、キャンパス向けの「FlexCampus」、支社・支店向けの「FlexBranch」から構成され、管理用の「FlexManagement」により一元管理できる。HPの新しい管理ツールである「HP Intelligent Management Center(IMC) version 5」では、HP製品はもちろんのこと、35以上のベンダーの2600のネットワーク製品を管理できるという。このうち1000以上はシスコ製品だ。
HP FlexNetworkアーキテクチャの概要 |
このようにHPのアーキテクチャはマルチベンダー対応を大きな特色の1つとしているが、バニック氏はガートナーのレポート『シングルベンダーネットワークの神話を覆す』を引用し、「2つ目のネットワークベンダーを取り入れることにより、ほとんどの組織で少なくとも5年間で15~25%のTCOを削減可能。シングルベンダーに統一することでTCOを削減できるという神話は嘘だ」とも述べた。ここでいうシングルベンダーとは、言うまでもなくシスコのことである。