シスコシステムズは2023年12月1日、同社にとって初となる調査結果「AI Readiness Index(AI成熟度指標)」を公表した。世界の8000社以上を対象として行われた調査で、企業が人工知能(AI)を活用・展開できる体制を整備できているかどうかに焦点を当てたもの。近い将来に深刻なリスクとなりうる主要な事業の領域や、インフラストラクチャにおける重大なギャップの存在を明らかにしているという。
シスコが公表した「AI Readiness Index(AI成熟度指標)」。記事末尾のリンク先で、日本語版が期間限定公開されている
注目されるのが、本調査に回答した日本の組織の97%が過去6カ月で「社内におけるAI技術導入の緊急性が高まった」としているにも関わらず、AIの展開・活用に向けて十分に準備ができている組織はわずか6%に留まったことだ。
「戦略」「インフラストラクチャ」「データ」「ガバナンス」「人材」「文化」の主要な6領域について調査を行った結果、全体として「先行者(Pacesetter:十分対応できている)」とされた日本企業は6%。一方、「遅滞者(Laggard:対応できていない)」は16%、「後発者(Follower:あまり対応できていない)」が58%となった。
領域ごとに見ると、AI活用・展開に向けた第一歩となる「戦略」については、ポジティブな結果も示された。レポートでは、「92%の組織がすでにしっかりしたAI戦略を整備している、あるいは策定を進めている段階で、良好な傾向が見られています」と評価。具体的には、ITインフラストラクチャとサイバーセキュリティがAI展開の最優先分野として挙げられているという。
対して、大きな課題が認められたのが、「データ」「ガバナンス」の領域だ。
データのAI対応は、全6領域の中で遅滞者(Laggard)の比率が最も高かった(30%)。全回答者の91%が、組織内でデータが共有されず、サイロ化されていると回答。「これは重大な問題で、さまざまな場所にあるデータを統合し、AIで活用できるようにするのが難しく、それらを活用する可能性を十分に引き出すことができなくなる」と問題の深刻さを指摘している。
ガバナンスについても、AI活用・展開の方針の整備が遅れている。データプライバシー、データ主権、世界各国の規制の把握と遵守といった、信頼・信用の低下を招く恐れのあるあらゆる要素を検討、管理するために必要な対策として、包括的なAI方針を整備している組織は16%に留まっている。