「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る《4-2》グループ会社にもSNSを!~Nextiのグループ展開~――NTTデータ流ソーシャルテクノロジー

「Twitter」や「SNS」に代表されるソーシャルテクノロジーが、企業でも使われ始めた。厳しい経営環境を乗り切るために、組織へ組み込み、コミュニケーションの活性化に役立てようとする企業も現れている。本連載では、2009年のダボス会議で「持続可能な100社」に選ばれたNTTデータの取り組みを中心に、ソーシャルテクノロジーのメリットから活用のポイントを分かりやすく紹介する。

NTTデータグループの社員数は2009年4月時点で3万4,000人を超え、急速に拡大を続けています。その中でNTTデータ一社の社員数は9,000人程度で3割にも至りません。

SNSはユーザー数が拡大すればするほど活性化し、集まる情報の量や質も高まります。そこで2009年7月、NTTデータの社内SNSとして運営してきたNextiを、再びボトムアップの活動によってグループ会社にも展開しました。本節では、その活動における様々な議論や検討事項、そしてトップダウンで与えられた支援について紹介します。

4.2.1 グループ展開の夜明け

そもそもNextiは第3章で説明した通り、NTTデータグループの行動ガイドラインのひとつである「セクショナリズムを排し、仲間の知恵と力を合わせます」の実現を目的としたものです。では、なぜ最初からグループ全体でのSNSを構築しなかったのでしょうか。

実は、Nextiを立ち上げたリスペクターズのメンバーは、最初からグループ全体のSNSを作りたいと考えていました。しかし、そのためには解決しなければならない課題が山のようにありました。そこで、スピード感を重視したメンバーは、「small start. small win.」の方針に則り、まずNTTデータ一社で社内SNSの実績を作ることが重要と考え、単独でスタートする道を選択しました。

Nextiを立ち上げてから1年半後の2007年秋、Nextiは社内に浸透し、多数のメディアからも注目されるようになってきました。当初の方針であった「small start. small win.」は、既に達成されていたと言えるでしょう。一方、運営メンバーの元には、グループ会社のNTTデータ東海から「Nextiを地域会社全体で使えるようにしてほしい」という要望が届いていました。

しかし、当初の思いとは裏腹に、この時点でのNextiのグループ展開は全くと言って良いほど進んでいませんでした。次の4つの大きな課題が解決できずに残されていたのです。

・セキュリティの課題
グループ会社間でセキュリティポリシーがまちまちであり、Nexti上での発言内容を統一的に扱うことができない

・ネットワークの課題
グループ会社の社員が使えるSNSをどこに置くのか決められない

・処理方式の課題
グループ会社全体で同じSNSを使うのか、それとも各社で別々のSNSを立てて連携させるのか、などの処理方式が定められない

・検討メンバーの課題
検討メンバーにNTTデータの社員だけではなくグループ会社のメンバーを入れたいが、どのように選出すれば良いのか決められない

Nextiはボランティアで運営されていますが、当時、立ち上げメンバーの多くが業務繁忙からNextiの運営を離れており、これらの課題を解決するためのパワーが不足していました。再びメンバーの心を焚き付け、パワーを結集させるきっかけが必要でした。

そのきっかけは、ある日突然Nexti上に訪れました。2007年10月、NextiのQ&Aに「Nextiのグループ展開について」という問い合わせが掲載されたのです。掲載したのはグループ会社のNTTデータ先端技術に出向していた社員で、「NTTデータ先端技術社内でSNS導入を検討しています。もし、Nextiがグループ展開されるのなら、重複を避けるためそれを待ちたいと思います。状況を教えてください」というものでした。

この質問に対して運営チームは、前出の4つの課題が解決できていないと回答したところ、「それでは時間がかかりそうなので、SNSは独自で立てます」と、Q&Aそのものはそこで終わってしまいました。しかし、この質問がきっかけとなり、元々グループ展開をしたいと考えていたメンバーが再結集することになりました。

4.2.2 とあるコミュニティでの協議

このQ&Aを契機に、Nextiのとあるコミュニティ上では「なぜグループ展開は進んでいないのか」という意見から、その意義や懸案事項、進め方について、次のような様々な議論が展開されました。

グループ展開が進まない理由
・ボランティアベースの活動では立ち上げには力が入るが、一旦落ち着いてしまうと推進力が働かなくなり、課題を解決できないのではないだろうか。

・リスペクターズにグループ会社社員がいないので、切実な思いを持っている人がいないのではないだろうか。

グループ展開の意義
・Nextiがグループ展開されていないことは、グループ全体から見たらものすごく大きな機会損失なのではないか。例えば、Nextiを使って盛り上がっている社内のボランティア活動があるが、もしNextiがグループ展開されていれば、いきなり全国展開できたはずだ。

・NTTデータグループでは連結意識がものすごく低い。グループSNSができれば連結意識の向上に確実に寄与するはずだ。

・グループ会社で情報を求める意識の高い人ほど、突然情報がたどれなくなることで壁を感じてしまっている。これはグループ経営上とても大きな問題であり、何とかして解決しなくてはならない。

懸案事項
・Nextiが盛り上がったのは「社内」という距離感があり一体感があったため。グループ会社が入ることで、その一体感が失われはしないだろうか。

・NTTデータ社員、グループ会社社員ともに情報リテラシーは十分なのだろうか。また、セキュリティ上の懸念はないか。

進め方
・実現したいことは「グループ会社間の壁を壊すこと」。Nextiのグループ展開はそのひとつの手段であり、例えば、Nextiとは別のSNSを新たに立ち上げるという選択肢もあるのではないか。

・今どき本社が作ったものをグループ会社に使わせてあげる、という状況ではない。グループ展開はグループ会社の社員も一緒に検討するべきだ。

議論を重ねていくうちに、議論に参加していたメンバーには何としてもグループ展開を実現したいという思いが高まってきました。そして、Q&Aに問い合わせをしてきた出向者を通じて、NTTデータ先端技術の社員と意見を交換することにしました。

本連載は、2010年1月にリックテレコムから発行されたソリューションIT新書『NTTデータ流ソーシャルテクノロジー ~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~』(著者・Nexti運営メンバー有志)を転載したものです。

金子 崇之(かねこ・たかゆき)
株式会社NTTデータ 基盤システム事業本部
1999年、NTTデータ入社。技術支援部署に所属し、オープンソースについての検証や技術支援に従事。現在は基盤系ビジネスの拡大に携わる。
NTTデータ先端技術への出向をきっかけとして、NTTデータの社内改革プログラム「X-NEXT」でNextiのグループ展開を提案。同活動のオーナーとして活動している。

吉田 英敬(よしだ・ひでたか)
株式会社NTTデータ 第一公共システム事業本部
1997年、NTTデータ通信入社。システム科学研究所において、社会と生活の情報化に関する調査研究を経て、総務省地域SNS実証実験等のプロジェクトに参画。
現部署に異動した後は、営業として自治体の情報化に関する企画提案に携わる。Nextiの運用・問合せ対応メンバーのひとりとして活動する。

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