「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る《4-2》グループ会社にもSNSを!~Nextiのグループ展開~――NTTデータ流ソーシャルテクノロジー

「Twitter」や「SNS」に代表されるソーシャルテクノロジーが、企業でも使われ始めた。厳しい経営環境を乗り切るために、組織へ組み込み、コミュニケーションの活性化に役立てようとする企業も現れている。本連載では、2009年のダボス会議で「持続可能な100社」に選ばれたNTTデータの取り組みを中心に、ソーシャルテクノロジーのメリットから活用のポイントを分かりやすく紹介する。

4.2.5 X-NEXT活動へ参加

グループ展開に対するトップダウンの支援は、ステアリングコミッティの承認だけではありませんでした。ステアリングコミッティへの報告から1ヶ月後の2008年4月、NTTデータは「X-NEXT(クロスネクスト)」という組織横断型企業変革プログラムを開始しました。

NTTデータでは、新・行動改革WG以降、職場主導型のボトムアップ改善活動である「NEXT(ネクスト)活動」を推進していました。その発展形として、自分の職場だけでは成し得ないような大きな改善につながる提案のためにX-NEXTを制度化したのです。

X-NEXTでは「自組織のミッションにとらわれていない」「自ら主体的に行動できる」「グループビジョン、行動ガイドラインに沿っている」活動に対して、職場を離れた改善活動を支援するため、以下の4つの仕組みを提供します。

・活動時間(NEXT Time)の確保
X-NEXTのための稼働時間として、社員の超勤を除く稼働時間のうち310%を改善活動に割り当てることを認める。

・活動費用の支援
NEXT推進室に相談の上、必要性が認められた場合に活動費用を提供する。

・アドバイザー
経営幹部が活動の初期段階から顧問としてチームの活動に参画し助言を与える。アドバイザーを頼まれた経営幹部は、依頼を断ることはできない。

・再チャレンジの許可
X-NEXTでは全社員の応援メッセージを参考としながら、ステアリングコミッティが提案の採否を決定する。採択されなかった提案についても、再提案の場が設定され、提案者が諦めない限り、何度でもチャレンジすることができる。

既にNextiのグループ展開は、ステアリングコミッティに承認されているものの、活動は相変わらずボランティアのままでした。そのため、メンバーは稼働時間の捻出や実組織との交渉、費用調達などに苦労していました。これらを解決し、またメンバーからさらなるコミットメントを引き出すために、グループ展開は“X-NEXT活動”とすることにしました。

4.2.6 「ひろネク」をチーム名に活動を開始

X-NEXTに登録するにあたり、活動名とチーム名が必要でした。グループ会社の人達と一緒にNextiを広げていきたい。そんな思いを込めて活動名は「ひろがろう!みんなのNexti♪」、チーム名はそれを短縮した「ひろネク」に決まりました。

実際の活動は、「グループ会社へのヒアリング」「NTTデータ社内の調整」「システム面の検討」の3つを柱として進めました。

(1)グループ会社へのヒアリング
ヒアリングは、Nextiに興味を持ってくれている会社を人づてに探し求め、実施していきました。その目的は次の通りです。

・Nextiのグループ展開に対するニーズの確認
活動メンバーが気づかなかったような、ニーズを発掘する。それにより、活動に納得性を持たせ、勢いを加速する。

・課題の認識
活動メンバーが気づかなかったような、課題を抽出する。

・仲間集め
グループ会社の中から、検討に参加してくれる仲間を集める。

(2)NTTデータ社内の調整
主にセキュリティとネットワークについて、NTTデータ社内で調整を図りました。セキュリティについては、ちょうど「グループセキュリティポリシー」が制定されたところで、NTTデータグループの社員が守るべき統一的なポリシーが運用され始めていました。

セキュリティポリシーというと“情報を隠すためのもの”と思われがちですが、実際には情報は流通してこそ価値が生まれます。NTTデータのそれは開示すべき情報はきちんと開示し、「情報を正しく活かす」ためのルールです。社内のセキュリティ推進室からは、「Nextiなどのシステムで適切に情報が流通するようにポリシーを作ったのだから、ぜひ活用してほしい」という励ましを含んだアドバイスをもらいました。

ネットワークについては、NTTデータグループ各社がアクセス可能な「グループワイドネット」が存在していたので、そこへサーバーを設置できるように調整を図りました。

(3)システム面の検討
最も時間がかかったのは、システム面の検討です。主な検討事項は次の通りです。

・既存のNextiを残して新たなグループSNSを立ち上げるのか、それとも統合するのか
新たなグループSNSを立ち上げる方が、既存のシステムの制約やデータ移行を考えずに済み、シンプルに作業を進めることができます。また、グループ会社を含めて新たに「自分たちで作っていく」感覚を味わえ、それを通じてグループ内の連携を強めることができます。ただし、SNSが2つあると、どうしても一方にはアクセスしなくなってしまいます。以上の結果、新たなグループSNSを立ち上げ、既存のNextiは読み出し専用にすることにしました。

・パッケージをどうするか
NextiはBeat Communications社のSNSパッケージをカスタマイズしたもので運用されていました。しかし、NTTデータ社員からは数多くの機能改善要望が挙げられており、そのほとんどに応え切れていないのも事実でした。運営チームの中には、自分たちでNextiのプログラムに手を入れたいと熱望する者も多く、グループ展開を機にオープンソースのパッケージに切り替えることにしました。

・機能追加
グループ展開に向けたNextiへの機能追加項目も検討しました。その中で最も大きかったのは「社外秘機能」の追加です。

当初、検討メンバーの中では「グループ会社間の壁を壊すためのNextiに社外秘機能は不要」とする声が多く、その方向で検討を進めていました。ところが、グループ会社のヒアリングでは、「会社内に限定した情報共有でも使いたい」という要望が多くありました。グループ会社社員の中にはNTTデータに常駐して仕事をしている人も多く、それらの人達は帰属会社との一体感を持ちづらいと感じていました。Nextiの中で、帰属会社の社外秘コミュニティを作ることができれば、グループとしての一体感とともに、個別会社ごとの一体感も醸成できる。このような声がグループ会社には多くありました。これらの声に応えるために、一般的なSNSでは装備していない「社外秘機能」を追加することにしました。

本連載は、2010年1月にリックテレコムから発行されたソリューションIT新書『NTTデータ流ソーシャルテクノロジー ~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~』(著者・Nexti運営メンバー有志)を転載したものです。

金子 崇之(かねこ・たかゆき)
株式会社NTTデータ 基盤システム事業本部
1999年、NTTデータ入社。技術支援部署に所属し、オープンソースについての検証や技術支援に従事。現在は基盤系ビジネスの拡大に携わる。
NTTデータ先端技術への出向をきっかけとして、NTTデータの社内改革プログラム「X-NEXT」でNextiのグループ展開を提案。同活動のオーナーとして活動している。

吉田 英敬(よしだ・ひでたか)
株式会社NTTデータ 第一公共システム事業本部
1997年、NTTデータ通信入社。システム科学研究所において、社会と生活の情報化に関する調査研究を経て、総務省地域SNS実証実験等のプロジェクトに参画。
現部署に異動した後は、営業として自治体の情報化に関する企画提案に携わる。Nextiの運用・問合せ対応メンバーのひとりとして活動する。

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