M2Mに挑戦する異業種企業(前編)――人手頼みだったAEDの点検作業を効率化

通信業界以外の異業種企業において、M2Mの活用により自社の競争力を向上させようという取り組みが進んでいる。今回取り上げるのは、人手頼みだったAEDの点検作業をM2Mにより効率化し、自社商品の競争力を高めたフクダ電子のケースだ。

人の命を救うAED(自動体外式除細動器)。従来は医療機関に限られて設置されていたが、今では駅や商業施設、一般のオフィスビルなど、多くの人が集まる場所への設置が認められ、CSRを重視する企業や教育機関などを中心に導入が進んでいる。2009年末時点での設置台数は20万6000台に及ぶ。

M2Mの活用により、このAEDの運用性を向上させたのが、AED市場で51%のシェアを持つフィリップス社製AEDの販売を行っているフクダ電子だ。AEDに通信モジュールを組み込んだのはフクダ電子が初である。

AEDの普及は著しい。しかし、それに伴って課題も生じてきた。設置したAEDの日常点検の手間である。AEDの場合、常に正常に動作可能かどうかが人命を左右する。そのためAEDには、バッテリー状態やパッドの状態をセルフテストするプログラムが搭載され、AED本体のインジケーターにテスト結果が表示されるようになっている。ただ、ここで問題となるのが、インジケーターの表示を点検担当者が見て回る必要があることだ。そこでフクダ電子が始めたサービスが「AEDガーディアン」である。「AED設置企業の日常点検にかかる負担を軽くするお手伝いをしたいという発想で生まれた」と同社営業本部AED営業部の根本有希氏は語る。

フクダ電子 AED
(左から)フクダ電子営業本部AED営業部の根本有希氏と中村仁美氏

無線なら場所を選ばない

AEDガーディアンは、NTTドコモのFOMA網を介しAED管理サーバー経由でセルフテストの結果を携帯電話にメールで通知するサービスだ。PCのWebブラウザで詳細を確認することもできる。同部の中村仁美氏によれば、AED管理サーバーには、AEDの設置場所や消耗品の期限情報など、AEDを管理する担当者のためのソフトウェアが搭載されており、PCの画面を見ながら複数のAEDを一括管理することが可能だという。

AED内部にはAEDガーディアン用の機器として「AS-1」と「D2F-アシスト」の2つを設置する。AS-1はAED本体が行うセルフテストの情報を赤外線経由で受信する機器。その情報を受けたAS-1は有線接続されているD2F-アシスト(FOMAユビキタスモジュールを内蔵)に伝達する。そして、D2F-アシストからFOMA網を経由して点検担当者にAEDの状態が送信されるという流れだ。

図表 AEDガーディアンのシステム構成イメージ
図表 AEDガーディアンのシステム構成イメージ

今年から販売が始まったAEDガーディアンだが、最初にそのアイデアが出たのは数年前。当初は有線通信を使う予定で、試作システムも開発したという。だが、有線だと通信ケーブルの敷設工事が必要となり、導入ハードルが高くなる。「無線なら場所を選ばず、しかも電源を入れればその日から使える。ガーディアンの通信技術としては無線が最適と判断した」と根本氏は説明する。同社は、通信モジュール搭載のAEDガーディアン対応AEDの販売目標台数を年間5000台としている。

月刊テレコミュニケーション2010年9月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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