文書に蓄積された知識の探索から現在進行形でコミュニケーションしディスカッションすることへ。そして、組織の壁を越えた情報の共有へ――。グループウェアの使い方が大きく変わり始めた。
グループウェアに変化をもたらしたものは、第1にリアルタイムコミュニケーション機能とソーシャルネットワーク機能の搭載であり、第2にクラウドサービスとしての提供である。第1と第2の変化を備えているものをクラウド型コラボレーションツールと呼ぶことにする。
クラウド型コラボレーションツールは2009年から続々と登場している。マイクロソフトは2009年4月にSharePointおよびExchangeなど同社のグループウェア/コラボレーション製品を「Microsoft Online Services」(MOS)の名称でクラウドサービスとして提供開始した。現在、MOSは4つのサービスからなるが、それらをセット提供する「Business Productivity Online Suite」(BPOS)はMOSの中核という位置づけ。
また、グループウェア市場で大きなシェアをもつLotus製品を保有するIBMも2009年10月にパブリッククラウドとして「LotusLive」ファミリーを提供している。日本発のグループウェアを展開するサイボウズは「サイボウズLive」の名称でクラウド型コラボレーションツールの提供を試験的にスタートさせている。同社は2010年夏にも一般公開して事業化する考えだ。高いシェアを持つグループウェアがいずれもクラウド型コラボレーションツールへと変貌しているのである。そして、セールスフォース・ドットコムが、ソーシャルネットワーク機能を取り込んだクラウド型コラボレーションツールとして「Salesforce Chatter」を2010年6月にリリースするなど、その波は他のアプリケーションベンダーにも及んでいる。
IBMの「LotusLive」の画面。Web会議やファイル共有、IM、ToDo管理など、コラボレーションに必要な機能をクラウド型で提供する |
既存のグループウェアと新たに登場したコラボレーションツールの違いは何か。IT分野の調査会社、アイ・ティ・アール(ITR)のシニア・アナリストである舘野真人氏はこう指摘する。
「従来のグループウェアはコラボレーションするための準備をするための道具だった。これからはオフィスワーカーのコミュニケーションそのものを支援していく」
グループウェアに搭載されている機能のなかでよく使われてきたのは会議室の予約。それはいってみれば、これからコミュニケーションするための準備作業である。対して、現在のコラボレーションツールでは音声通話やWeb会議などリアルタイムなコミュニケーション機能が実現されている。そこにクラウドサービス化の流れが加わり、新たなICT市場を生み出そうとしている。