「事業規模の大きい海外ベンダーとの競争が激しいなか、日本企業がどのように食い込んでいくかが重要」
総務省 国際戦略局 通信規格課 標準化戦略室長の清重典弘氏はこう話す。
標準規格に準拠した製品やサービスを製造・供給するのに使用が避けられない特許は、「必須特許」と呼ばれるが、5Gの必須特許はファーウェイを筆頭にエリクソン、ノキア、クアルコムの4社で全体の5割強が占められている。
6Gでの巻き返しを狙い、総務省が2020年に公表した「Beyond 5G推進戦略~6Gへのロードマップ~」では、6Gの必須特許シェア10%以上という目標を掲げ、知財・標準化戦略への注力が打ち出されている。
得意分野の出願に特化する日本6Gの標準化作業はこれからであり、まだ必須特許は定まっていないが、すでに世界中で競争は過熱している。
ICT技術関連の調査会社サイバー創研は2021年9月、6Gで中核になると見られる特許の出願動向に関する調査結果を発表した。これによると、6G関連の特許出願で他国を圧倒的にリードしているのが中国と米国だ。
テラヘルツ波や衛星統合通信など、6Gに関連する特許約2万件の国別出願比率は、中国が最も多く40.3%、次いで米国が35.2%(図表1)。
図表1 6G中核技術の国籍別出願率
6G中核技術別の上位20位までの出願人においても、中国は6項目で1位、米国が5項目で1位(2項目で同数1位)となっている(図表2)。
図表2 6G中核技術の主要国の勢力比較と上位出願人
日本も出願比率9.9%で3位と健闘しているが、米中の背中ははるか遠くだ。
ただ、「中国、米国については、特殊な状況にあることを考慮に入れる必要がある」とサイバー創研 特許調査分析部 5G 必須宣言特許調査チームの中西健治氏は指摘する。
同氏によると、中国は一定数以上の特許を出願した企業に対し税制を優遇する制度を設けており、中国企業は特許出願の数自体を稼ぐ必要がある。また、米国では、潤沢な資金を得たスタートアップが新たな技術を開発し、将来有望と判断した大企業が買収するエコシステムができあがっている。
そうした中で日本は、テラヘルツ波で上位20位以内にパイオニアやキヤノンなど7社が入っている。また、全光通信ではNTTが2位、住友電気工業が8位と上位にいるほか、上位20位以内に3社が名を連ねる。