SPECIAL TOPICネットワークの変革なしにDXは語れない 著名人が語るDXのポイント

「エンタープライズDXを支えるネットワーキングのあるべき姿―セキュリティからクラウド、AIOpsまで」をテーマとして、ジュニパーネットワークスは「Juniper Virtual Summit for Japan 2021」をオンラインで実施した。基調講演では東京大学・デジタル庁の関谷勇司氏をはじめ、全日本空輸(ANA)の野村泰一氏やデンソーの成迫剛志氏が企業におけるDX推進の現状や実例について語ったほか、企業ITや運用DX、セキュリティをテーマにしたブレークアウトセッションにも注目が集まった。本イベントの模様を詳しくレポートしたい。

ANAとデンソーが語るDXの要諦DX推進において多くの成果を生み出しているANA(全日本空輸)は、さまざまなシステムを内製で開発している。ANAのデジタル変革室 イノベーション推進部でDXに取り組む野村泰一氏は、同社で実現したDXの一例として、遺失物情報を管理するためのシステムを紹介した。このシステムの開発に至る経緯や、それを内製で構築したプロセスについて詳細に語った。その中で、例えば客室乗務員が忘れ物を発見した際、写真をタブレットで撮影してシステムに登録するといったお客様目線でのDX事例を紹介した。

全日本空輸 デジタル変革室 イノベーション推進 部長 野村泰一氏
全日本空輸 デジタル変革室 イノベーション推進 部長 野村泰一氏

忘れ物を見つけたタイミングで写真を撮り、即座にシステムに登録しておけば、実物がまだ担当者の手元になくても、問い合わせに対してその忘れ物があったかどうかを即座に確認できる。野村氏は、こうした取り組みは、顧客を大事にするANAの姿勢が現れたものだと語っている。

さらに野村氏は機内食の発注にAIを用いる取り組みなどを説明しつつ、IT部門そのものの機能や役割をいかに変えていくかが重要であるとして、働く仲間と顧客、そしてデジタルが「いい形」になって連動するか、そういったデザインを進めることがポイントだとした。DXに取り組む企業にとって、とても参考になるメッセージだ。

ANAの野村氏に続き、デンソーで執行幹部 モビリティシステム事業グループ DX推進担当兼クラウドサービス開発部長を務める成迫剛志氏は、DXの文脈の中で語られることが多い、ソフトウェアファーストについて講演した。

デンソー 執行幹部 モビリティシステム事業グループ DX推進担当兼クラウドサービス開発部長 成迫剛志氏
デンソー 執行幹部 モビリティシステム事業グループ DX推進担当兼クラウドサービス開発部長 成迫剛志氏

デンソーにおけるDXの取り組みは、成迫氏はホワイトボードと付箋紙、そして実際に開発を行うSoftware Development Teamだったと話す。その上で「ベストプラクティスをちゃんとやる必要がある」(成迫氏)との考えから、DXに関して知見を持つ専門家に現場に寄り添ってもらいながら仕事を進められる環境を整えているとした。

さらに成迫氏は、DXやソフトウェアファースト、アジャイル開発について技術論や手法論に陥りがちだが、ユーザーを直接見て、ユーザーのデータを直接得られることにDXのポイントがあると話す。当然ではあるが、DXにおいてもその目的を見失えば成功は覚束ない。成迫氏は、DXに取り組む理由や目的を整理する重要性を伝えている。

これからの企業ITが幅広いテーマで語られたブレークアウトセッション基調講演・特別講演を含むジェネラルセッションではエンタープライズDXに取り組む上で重要なポイント、さらにはネットワーク運用の高度化などについて語られた。その後のブレークアウトセッションでは、①「アフターコロナの企業IT」、②「次世代の運用DX」、③「セキュリティ」の3つのテーマに基づいて最新のテクノロジー、ソリューションが紹介された。

「アフターコロナの企業IT」のセッションである「AIOps-AIを活用したネットワーク運用」では、ジュニパーネットワークスがエンタープライズに向けたビジョンやこれからの時代のネットワークソリューション、そしてAI Driven Enterprise(AIDE)とMistについて、「エンドツーエンドでの品質の可視化、AI主体の運用の実現-受け身運用からの開放」を実現するソリューションだと説明し、これによってネットワーク運用がどのように変わるのかが解説された。

Mistが提供する機能として紹介されたのは、AIによるサービス品質の可視化やダイナミックパケットキャプチャー機能、強化学習モデルを活用した電波自動調整機能などだ。またAIDE/Mistを利用することで、ユーザーが申告する前に先回りして問題を特定し、対処することが可能であるという。

また「次世代の運用DX」の「オープンアーキテクチャがもたらす運用環境の可能性」と題して行われたセッションは注目だ。DXではクラウドやIoT、ネットワーク、さまざまなアプリケーションがあり、それぞれで連携すべき項目は多岐に渡るため、全体を把握することが困難であることなど、DX運用における課題について触れられている。

そうした課題を解決し、DXを推進するためのソリューションとして、Fixpoint社やBlueCat社の製品との連携、大規模ネットワーク運用においてユーザー体感を改善するジュニパーのParagon Active Assuranceが紹介された。さらにDX運用のためのプラットフォームとして「NFX」シリーズを取り上げ、さまざまなサービスをVNFとしてCPE側で実現することが可能であることが説明された。

「セキュリティ」カテゴリでは、国立研究開発法人 情報通信研究機構 サイバーセキュリティ研究所 サイバーセキュリティ研究室 主任研究技術員である遠峰隆史氏がゲストスピーカーとして講演した。

遠峰氏はIPAが発表した2021年版の情報セキュリティ10大脅威を紹介しつつ、マルウェアなどを実行したことによるものや外部からの攻撃によるものといった外部からの攻撃、そしてセキュリティ確保の不徹底、内部監査の抜け穴などの内部の事象などの最新の脅威を紹介した。

たとえば外部からの攻撃によるものでは、脆弱性を利用した攻撃や既知の情報漏えいによる攻撃、機器にあらかじめ仕込まれた攻撃などがあるとした上で、内部で対策を徹底していたとしても、サプライチェーンの中で仕込まれた攻撃は対策が難しいという。

同じくセキュリティカテゴリの「ゼロトラストセキュリティの作り方」と題したセッションでは、昨今注目されているゼロトラストセキュリティを構成する要素や、そこで使われるAIに求められる機能、さらにネットワークのすべてのエッジポイントにセキュリティを拡張する「ジュニパー コネクテッドセキュリティ」について詳しく紹介されていた。

ジュニパー コネクテッドセキュリティはネットワークのすべてのエッジポイントにセキュリティを拡張子、ユーザーやアプリケーション、インフラストラクチャを保護する。まず観察フェーズではマルチベンダーのセキュリティイベントや脅威インテリジェンスを収集、その後協同して検知、脅威とノイズを区別し、ホストの自動隔離やワンタッチでミチゲーション(隔離)を行う。

ここで紹介できなかったセッションは、ほかにもたくさんある。「Juniper Virtual Summit for Japan」は現在見逃し配信が行われていている。当日参加できなかった人や、この記事を読んで興味を持っていただいた人も、2022年2月23日(水)まですべてのセッションを聴講できる。本稿では解説しきれないほど内容が盛りだくさんのイベントとなっているので、ぜひチェックしていただきたい。

Juniper Virtual Summit for Japan 2021 見逃し配信中

https://juniper-jvs2021-md-2.splashthat.com/

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